紅短歌会(主宰・玉城洋子)の合同歌集「くれない20」が出版された。1人50首25人の1250首の作品が並ぶ。作者は7人が県外在住者で、年齢の幅も広く、それだけに歌も個性的なものになっている。
「歌は人なり」と言うが、素材をどう捉え、表現していくかが個性の形成につながる。これまでも沖縄の歌人に批判的な声があったが、昨年にはT短歌雑誌の沖縄特集に、問題点の指摘や提言などがあり、沖縄の歌壇挙げての研究会も持たれた。外部の声は声として聞き、沖縄の歌も一つの個性と捉えたい。
この歌集の作者らも沖縄の自然や歴史・文化を素材にした個々の生活や東日本大震災の歌を詠んでいるが、沖縄戦や平和への願い、米軍基地などの沖縄詠を紹介する。
摩文仁野の冷たき風は北向きに散華の人の墓碑銘なずる 喜納 勝代
砲弾に追われ潜みし金武の鍾乳洞(ガマ)少年われに生き死にの記憶 仲村 致彦
戦世を貧しさを生き、42年前に実現した本土復帰も米軍の基地付きで、今新たな基地の問題に直面している。不条理を許さず、平和な島・沖縄をと願う心の叫びを聞く。
戦世も貧しき戦後も生かされて生くる命を謝して拝まむ 池原 初子
老い母の脳(なづき)に残る戦争がふいに語られる夏草のうへ 古堅喜代子
この地球に平和呼ぶごと大空を舞い飛ぶサシバの群れは今年も 伊志嶺節子
この島に許してならじオスプレイ赤きシャツ着て車椅子に叫ぶ 玉城 寛子
米軍基地普天間囲みさあ歌へオキナワカエセイノチヲカエセ 玉城 洋子
沖縄の今を詠むことはこの時代の証人になることであり、紅短歌会のさらなる前進を期待してやまない。
資料「短歌で訴える平和・朗読」は、紅短歌会が2005年から14年まで、県内外・国外の歌人に呼び掛け、応募した「平和の一首」。併せて一読を勧めたい。
(謝花秀子・日本歌人クラブ会員)
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くれないたんかかい 糸満を拠点とする短歌サークル。平和朗読会など精力的な活動を展開している。