『沖縄空手 七人の侍』 親子で楽しめる空手歴史


社会
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『沖縄空手 七人の侍』外間哲弘著、山里秀太画 琉球新報社・2300円+税

沖縄空手七人の侍

 大人と子どもが一緒に読み、楽しめる空手読本。文章とマンガを併せた画期的な本だ。「空手道・歴史概略」を序章に第2章「沖縄空手・七人の侍」と続く。タイトルも面白いが、特徴は誰にも手軽に読めるマンガを先鋒とし、次に文章にまとめるという異色の書き出しだ。

本書を著した外間哲弘氏は沖縄剛柔流拳志会空手道古武道総本部会長、体育学博士、沖縄初空手殿堂入りの肩書きを持つ。マンガを担当する作家は専修学校インターナショナルデザインアカデミー卒業の山里秀太氏。外間氏は海外、幾多の国で活躍。空手普及に尽力した空手家で、これまで25の著作を出版。文武両道を志す努力家で、研究熱心の人である。
 本書は琉球の空手の歴史に加え、沖縄芝居にも上演をみた伝説に残るそうそうたる空手家が名を連ねる。“唐手(トーディー)佐久川”と呼ばれた男・佐久川寛賀。琉球の関羽、跳び蹴りの名人・真壁チャーン(朝顕)。牛との決闘・武士松村(松村宗昆)。泊の武士・泊手の達人(松茂良興作)。世界的空手普及の父・スイデーの大御所(船越義珍)。本部御殿手、ボクサーを倒した男・本部ザール(本部朝基)。那覇手の拳聖・東恩納寛量、宮城長順ら。琉球空手に輝く武士たちの名前が残される。
 幼少の頃、母に連れられて沖縄芝居を見た。劇中、武士松村対平安山次良、糸満マギー対真壁チャーングヮー、諸見里アコー対○○…。それらの対決を今、回想する。これまでの空手諸本に例を見ない試みとして成功しているのは歴史本文に加え、少年少女にも読めるよう内容を解きほぐしたことだろう。近年、マンガという媒体は成人にまで読者が浸透し、爆発的人気だ。山里氏のマンガは世界的ロングセラー「ドラゴンボール」を彷彿させるシャープで躍動感にあふれ、息もつかせぬ臨場感を描きあげる。随所にユーモアをちりばめ、心配りが垣間見える。大人の気分転換、未来を担う少年少女、これから空手を志そうとする諸君にぜひ、一読を勧めたい。親子で一緒に空手の歴史を学びながら読める本である。(勝連朝昭・那覇文芸「あやもどろ」会員)
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 ほかま・てつひろ 沖縄空手剛柔流範士10段、体育学博士。 やまざと・しゅうた 2012年、専修学校インターナショナルデザインアカデミー卒業。現在、同校マンガ学科非常勤講師。