『美女と野獣』と言えば今や、ディズニーアニメが有名。でも、そうでした! 原作は1740年に生まれたおフランスのおとぎ話。詩人ジャン・コクトーも自ら監督し、1946年に実写版を製作したのでしたっけ。
考えてみれば、美とはなんぞや?を根本的なところから考えさせられる、美意識の高いお国柄が色濃く出た物語だ。最新技術を駆使した本作で、父親がバラを盗んだために怪しげなお城で捕らわれの身となるのは、映画『アデル、ブルーは熱い色』でパルムドール(最高賞)に輝いたレア・セドゥ。そして野獣は、フランスを代表する個性派ヴァンサン・カッセル。
『サイレントヒル』の監督なので、怪しくも妖艶な世界をつくり上げているのだけど、なんだかなー、この違和感。やっぱり『アデル~』でレアちゃん演じるエマに恋しちゃった者としては、彼女には美女よりも、男前な“タチ”がお似合い。それより、恐ろしき野獣の魔法が溶けたらヴァンサンだったなんて、野獣そのまんまやんけー!
つまりキャスティングにどうも納得いかないところがあるのだが、ギャグとしてヴァンサンを起用したならOK。でもレアちゃんに関しては、『アデル~』からの脱却を狙っているのかもしれないが、だからといって本作はどうだろう? 家族思いの無垢なお嬢さまのわりには眼光が鋭く、笑みが不敵過ぎるぞ。
ディズニーアニメに対抗するダークホラー版だと覚悟して見れば、これもアリ…かな?★★★☆☆(中山治美)
【データ】
監督:クリストフ・ガンズ
原作:ヴィルヌーヴ夫人
出演:レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル
11月1日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)
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