『Ai 愛なんて 大っ嫌い』冨永愛著


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ランウェイは続く
 過激な表現ゆえか、発売直後よりセンセーショナルにメディアで取り上げられていたモデル・冨永愛の自伝。貧しかった幼少時代、身長のことで受けたいじめ、母への愛憎……自身の半生をむきだしの言葉で、時に粗削りに記している。

 橋本のヤンキーが、「絶対にぶっ殺してやる」と復讐心を胸に、頂点を目指す。多くの栄光を手にし、その陰で大切なものを失い、家族の存在を通して初めて自分自身と向き合うようになる。時に叫ぶように、絞り出すように、恥ずかしそうに、穏やかな笑みを浮かべて……彼女が一語一語にどれだけの気持ちを込めたかが伝わってくる本だった。
 実父との再会に涙。母がむいてくれたりんごにも涙。泣きはらした息子が、「……ぼく、生まれてこなきゃ、よかった」ってつぶやいた日にも涙。同い年で親近感があるのも手伝ってか、涙なしには読めなかった。でも息子の言葉を受け、翌日から早朝5時半に起きて家の前の坂道約100メートルを10本、ダッシュで駆け上がることに決めたというエピソードには……ちょっと笑った。なんで?と思わなくもなかったけど、きっと大真面目に出したアイデアなんだろうな。シングルマザーである彼女が息子と向き合うためにはどうしたらいいか。父と母の役割を自分が担うこと。親子で苦楽を共に味わうこと。それらを考え、考え抜いて至った「走り込み」だったんだろう。
 そして涙と鼻水でズビズバになりながら読んだ「あとがき」には衝撃の展開が。突然のサプライズ、長渕剛大先生のご登場です。なんでも公私ともに親交の深い長渕剛が冨永愛に書くことを勧め、本書は誕生したのだとか。自伝の舞台は川崎→ニューヨーク→パリ→ニューヨーク→日本と移り変わり、行き着く場所は長渕剛。世界って広いな。なんだか遠い異国の旅から強制送還されたような気分になりました。
 「いい時も悪い時も、これが自分のランウェイだ」と覚悟を決めた強さを感じる一冊。私も私の道を、全力で愛したいと思いました。あと長渕剛、聴いてみよっかな!
 (ディスカヴァー・トゥエンティワン 1400円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

Ai 愛なんて 大っ嫌い
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