『普天間移設 日米の深層』 鳩山元首相の孤軍奮闘描く


社会
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『普天間移設 日米の深層』 内間健友、島袋良太著 青灯社・1400円+税

 沖縄県民の8割が普天間基地の辺野古移転に反対しているという現状をみれば、日本が「最低でも県外」への移設を求めるのは当然の要求だ。
 ドイツをみてみよう。ドイツとアメリカは、ドイツにおける米軍基地を扱うため、日米地位協定に相当する「ドイツ駐留NATO軍地位補足協定」を持っている。特定施設が共同防衛任務の重要性よりも、ドイツ側の利益が明らかに上回る場合には、米国はドイツ当局の当該施設区域の返還請求に適切な方法でこれに応ずるものとする。ドイツ側の利益とは国土整備、自然保護、経済上の利益である。

 代替基地があるから移転するのでない。まず撤退を決定する。次にどこへ行くかは米国が決め、必要なら日本と相談すればいい話だ。
 この当然の権利を2009年7月19日、民主党代表の鳩山由紀夫氏が「最低でも県外」と沖縄市民会館で打ち上げた。それは政権をとった民主党の重要政策となった。
 新政権が沖縄県民の気持ちを反映し、米国と「最低でも県外」で交渉するのは当然のシナリオである。ここからすさまじい巻き返しが始まった。
 政治家(しかも与党の)、官僚らが足を引っ張る。本来、こんな非民主的行動は徹底して糾弾すべきであるが、マスコミは沈黙してきていた。
 琉球新報は「日米廻り舞台」の連載を行い、それがこの本の基礎となっている。
 本書には、足を引っ張ったり、引っ張る側にいたりした人の名前が実名で出てくる。書きとめてみたい。
▽民主党議員=前原、長島、平野官房長官、北沢防衛相、岡田外相、直嶋、渡辺
▽外務省=薮中次官、斎木現次官、梅本北米局長 藤崎駐米大使ら
▽防衛省=高見沢防衛政策局長、黒江次長ら
▽有識者=岡本行夫。
 これらの人を相手に、鳩山首相は孤軍奮闘し、力尽きた。日本の政治史の中で類いまれなドラマが展開されていたのだ。
 (孫崎享・東アジア共同体研究所所長)
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 うちま・けんゆう 2003年4月、琉球新報社入社。編集局運動部、中部支社報道部、社会部、整理部、政治部を経て事業局教育スポーツ事業部。
 しまぶくろ・りょうた 2007年4月、琉球新報社入社。編集局写真部、社会部、経済部、中部支社報道部を経て13年4月からワシントン特派員。

普天間移設 日米の深層
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