『滝を見にいく』 7人の個性を生かし化学反応を引き出す


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 『キツツキと雨』『横道世之介』の沖田修一監督の新作は、7人の侍ならぬ“7人のおばちゃん”が主人公のサバイバル・コメディー。しかも、その7人を「40歳以上の女性・経験問わず」という条件で一般公募して選んだそうだから、キャストはほぼ無名の素人が中心。脚本だって沖田監督のオリジナルだ。自主映画ならともかく、現在の製作委員会システムの中で「よくぞ作れた!」と、それだけでも拍手したくなる。

 性格も境遇もバラバラな44~79歳の女性7人が、幻の滝を見にいく温泉付き紅葉ツアーに参加。ところが、ツアーガイドが不慣れだったため途中で道に迷い、ケータイの通じない山中で夜を明かすハメに…。
 キャスト陣には劇団所属者もいるけれど、撮影が行われた新潟県妙高市役所の地域サポート人、元オペラ歌手、若い頃女優になりたかった79歳の主婦といった一般の人たちも自然なたたずまいで画面に溶け込んでいる。だから、7人7様の個性や素の魅力を生かして彼女たちから化学反応を引き出した、沖田監督の手腕にも拍手を贈りたくなる。素人同然の彼女たちが皆、次第に名コメディエンヌに見えてくるほどなのだ。ユーモアとペーソスのさじ加減も絶妙で、いわゆる“冒険コメディー”なのに詩情すら感じさせる。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督・脚本:沖田修一
出演:根岸遥子、安澤千草、荻野百合子、桐原三枝、川田久美子、徳納敬子、渡辺道子
11月22日(土)から全国順次公開
(共同通信)

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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。

(C)2014「滝を見にいく」製作委員会
外山 真也