【島人の目】命どぅ宝、誇りはもっと宝


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 辺野古移設にNOを突き付けた、先日の知事選の結果に僕は深く感動している。
 昨年末、ぶら下げられた振興予算に目がくらんだ仲井真知事が「良い正月を迎えられる」と発言した映像を、遠いイタリアでも観た。金さえ投げ与えれば沖縄は心を売る。本土の一部の人が見下している胸の内をそのまま代弁するあきれた図だった。暗澹(あんたん)たる気持ちになった。

 経済(金)は重要だ。だが経済では心は買えない。僕は故郷の沖縄を愛している。沖縄の貧しさに胸を痛めることもある。しかし沖縄の心を憂慮することは一切ない。それは反戦と反差別を主張する清廉正直なものだからだ。政権与党は知事選挙においても、また沖縄の心を買おうとした。だが結果は拒絶。沖縄県民は金よりも貧しさの中の誇りを選んだのだ。
 命どぅ宝、何をおいても命こそ大事。それは生の真理だ。しかし、経済のみに生きている命は本物の宝ではない。誇りを秘めた命こそ宝なのだ。知事選で県民が見せたのは、まさにその本物の宝物の、命(ぬち)の奔流だった。
 本土はもうこれ以上安全保障で沖縄にたかり続けることは許されない。安全保障上は多くの国民が沖縄にたかりつつ、逆に島が本土に金をたかっている、などと鉄面皮で下卑(げび)た非難をしたりする。沖縄への差別以外の何物でもない基地の過重負担と、それを見て見ぬふりをする国民の存在は、日本国の品位を深くおとしめている。
 日本国民はもうそろそろ偽善の仮面をかなぐり捨てて、沖縄の基地問題に真摯(しんし)に向き合うべきである。なぜなら基地は安全保障の問題であり、安全保障は全ての国民の問題にほかならないからだ。(仲宗根雅則、TVディレクター)