白血病乗り越え標語最優秀 小禄南小6年・稲嶺隆敏君


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ポスターになった自作の標語を指さし笑顔を見せる稲嶺隆敏君=16日、那覇市

 急性リンパ白血病を克服した稲嶺隆敏君(12)=小禄南小6年=は11月、那覇市が募集した「なは教育の日」標語で最優秀賞に選ばれた。

「知識の木 学ぶほどに 葉はしげる」。木を自分に置き換えて想像を膨らませたという。就学時に長期入院した生徒が復学する際には困難が付きまとう。稲嶺君は3年生までほとんど学校に通うことができなかったが、努力と家族の支えで乗り越え、今は学校生活を楽しんでいる。
 稲嶺君の標語は市製作のポスターに採用された。受賞について母の早苗さん(39)と父の盛隆さん(52)は「入院で復学に苦労している子やこれから復学する子の励みになってほしい」と語った。
 5歳の時に発症し、2年間は入院と抗がん剤治療が続いた。小学校に入学しても1年生の時は年4、5回ほど登校しただけだった。2年になっても年10日程度しか通えなかった。
 たまに学校へ行くと「分からないことだらけだった」と振り返る。「給食当番」「テスト」―。言葉の意味も分からなかった。ある日、数カ月ぶりに登校すると偶然、試験の日だった。次々と問題を解いている同級生の姿を見て、稲嶺君は涙を流した。「自分だけできないのは悔しいと思った」
 稲嶺君は分からない言葉があればすぐに辞書を引いた。猛勉強で学力も追い付き、今では同級生に勉強を教えることも多い。学級にも打ち解け「学校で休み時間にサッカーしたり友達とおしゃべりしたりするのが一番楽しい」と話す。児童会の役員も務めている。
 同級生と比べて就学が遅れていたからこそ、学べば学ぶほど知識が増える喜びをかみしめている。稲嶺君が自らを木に例えたという標語には、自分と同じように学校に通えていない子も「努力すれば追い付くことができる。頑張ってほしい」という思いを込めた。
 復学した当時を振り返り「さまよえる森にいた。今は明るい所に抜け出た感じ」だと語った。稲嶺君は来年、中学校に進学する。「科目が増えて新しいことを学べる。楽しみだ」と笑顔を見せた。
(明真南斗)