『フューリー』 米兵の横暴も描き賛否覚悟の意欲作


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 いつも付き合う女性の影響をモロに受けてしまうブラピ。アンジー姐さんことアンジェリーナ・ジョリーと出会ってからは社会に目を向けるようになり、自身の知名度を生かしてメッセージも発信するようになった。奴隷制度の真実を暴いた『それでも夜は明ける』もそう。そして今回はズバリ反戦。しかも戦場の悲惨さをこれでもか!と出した荒療治のような手法で。やるじゃないか、ブラピ。惚れ直したぜ。

 第2次大戦末期。ドイツ国内に侵攻中のフューリー(激しい怒り)と名付けられた戦車にのる米兵5人の話だ。ナチスの蛮行を見せつつ、同時に描くのは米兵の横暴さ。それが今までの米国映画にはなかなか見られなかった描写で、ドイツ女性を乱暴して当然のような会話など見下した態度も見せる。そんな環境の中、純真だった新兵も毒され、次第に人を殺すこともいとわなくなっていく。最後は、ドイツ軍に囲まれた彼らの壮絶な死闘を見せ、観客を圧倒する。戦場で生まれた英雄は、多くの犠牲の上に成り立っていることを象徴するラストカットには、身震いすらしてしまった。
 という米国では賛否を呼ぶことも覚悟の上の意欲作なのだが、相変わらず日本の宣伝は「迫力の戦車アクション」とか「勇気ある5人の男たち」といった謳い文句でげんなり。それも客を呼ぶ一つの手法なんだろうけど、なんだかぁ?★★★★☆(中山治美)

 【データ】
製作総指揮・主演:ブラッド・ピット
監督・脚本・製作:デヴィッド・エアー
出演:シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン
11月28日(金)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美