不登校中学生の社会参加に光 那覇市が居場所づくり


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kukuluの社会体験プログラムで陶芸に挑戦する子どもたち=10日、那覇市牧志のMITSUOシーサー美術館

 生活保護世帯で引きこもりや非行などを理由に不登校になった中学生の社会参加を支援する、那覇市の居場所づくり事業が成果を上げている。さまざまな困難を抱える子どもやその親に対する丁寧な支援で、家から出られなかった子が学校に行けるようになったり、通っていた3年生9人全員の進路が決定した。

行政による福祉分野からの不登校支援は県内では那覇市だけで、全国的にも珍しい。識者は「行政と民間の連携が非常にうまくいった例。今後全県に広がってほしい」と評価している。
 市は2013年7月、生活保護世帯で不登校の子どもたちの居場所「kukulu(ククル)」を開設。事業を受託しているNPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい(金城隆一代表理事)の職員5人と市保護管理課の児童自立支援員が、生徒一人一人に合った体験活動などを通して生徒の社会参加を後押ししている。本年度は中学生14人が支援を受けている。
 市によると、本年度の市内の生活保護世帯の中学生は約300人で、そのうち約50人が不登校だ。
 市は生活保護世帯の中学生を支援するため、10年度から児童自立支援員を配置し、翌年度から学習を支援する無料塾を開始した。
 しかし、家に引きこもっていて塾に通えない子や塾に定着しない子へは支援が届かないという課題があった。
 そのような子は家庭環境が厳しいことも多く、既存の引きこもり支援からもこぼれ落ちている現状もあったため、これらの子どもたちを支援しようとkukuluが始まった。
 沖縄大学福祉文化学科の島村聡准教授は「行政だけでこれだけの支援をするのは難しい。民間のノウハウを生かしたことでうまくいっている。この仕組みは生活保護だけでなく、ほかにも広げられるだろう」と話した。(玉城江梨子)