『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』


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奇麗に環が閉じた“青春三部作”完結編
 演じる俳優の年齢に合わせて続編が作られていくシリーズと言えば、リチャード・リンクレイター監督の“ビフォア”シリーズが有名だが、これはセドリック・クラピッシュの『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』に続くシリーズ最新作。グザヴィエたちの10年後が描かれる。

 今や40歳、2児の父となっても落ち着かず、三くだり半を突き付けられた妻子を追ってNYで暮らし始めたグザヴィエ。そこに元カノのマルティーヌやレズビアンの親友イザベルらが絡む展開はこれまで以上にドタバタ感が強い。それでいて、シリーズの3人のヒロインが一堂に会するクライマックスからラストにかけては、哀感も漂う。
 今回が“青春三部作”の完結編だという。確かに、1作目『スパニッシュ~』を“本歌取り”したエピソードが多用され、対の関係を結んでいる。例えば、1作目の宗教家エラスムスと同様にグザヴィエの幻覚として哲学者ヘーゲルが登場したり、浮気の発覚を防ごうとして全員が駆けつけるそっくりのクライマックスだったり…。くるっと一回りするのが人生だと言いたげに、『ロシアン~』を真ん中にシンメトリーが出来上がることで、奇麗に環が閉じているのだ。これでおしまいだと思うと、ラストの余韻が一層胸にしみる。★★★★★(外山真也)

 【データ】
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、セシル・ドゥ・フランス、ケリー・ライリー
12月6日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也