沖縄と世界の懸け橋に 本紙海外通信員 新年の抱負(上)


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 伝統芸能や音楽、文化、ビジネスなど世界各地で県出身者や県系人の活躍が広がっている。沖縄と世界とをつなぐ懸け橋として、海外で活躍するウチナーンチュの話題を紹介している琉球新報海外通信員に、新年の抱負や決意を寄せてもらった。2週に分けて紹介する。

<イタリア>仲宗根雅則/故郷の団結を願う
 ことし、僕が特に注意深く見ていきたい、僕にとっての3大事案がある。(1)沖縄知事選で出た辺野古移転NOの民意と安倍政権の確執の行方(2)イタリア最年少首相レンツィ氏の無能とイタリア危機の行方(3)「アラブの春」発祥の地・チュニジアの民主化の行方-である。
 沖縄に過重な基地負担を押し付けて、それが差別であることさえ認めようとしない中央権力との対峙(たいじ)は苦しいものだが、沖縄は決して後戻りをしてはならない。金よりも誇りを選んだ知事選の熱意を失わずに安倍政権に相対すれば、普天間基地の「最低でも県外移設」の道は必ず開けると考える。翁長雄志知事を先頭に故郷沖縄が団結して進むことを願いたい。
 39歳という若さを武器に政権を握ったイタリアのレンツィ首相は、これまでほとんど何の成果も見せていない。財政危機と深刻な不況。イタリアのピンチはことしも確実に続く。首相の奮起または退陣を願う。
 ジャスミン革命でベン・アリ独裁政権が倒れた北アフリカのチュニジアでは昨年、議会選挙と大統領選が行われた。どちらも民主化勢力が勝って希望の光が見える。ジャスミン革命は中東を混乱に陥れている「アラブの春」の先駆けだった。チュニジアの民主化が再び先駆けになって、アラブ世界全体に自由と民主主義の風が吹く“真のアラブ春”の到来を期待したい。

<ロサンゼルス>当銘貞夫/執筆に生きがい
 私は南加県人会協議会の会長の要職1年間を全ういたしました。2014年は職務に支障を来すことは一切控え、自粛した1年でした。会長職に専念したかったからです。
 しかし、どんなに多忙を極めても手を休めなかったことがあります。それは本紙通信員としての記事やコラムの執筆でした。むしろ例年よりも数多く書きました。それだけ記事になるイベントや要人との出会いが断然多くなった事実が背景にあるのでしょう。
 ことしでロサンゼルス通信員歴17年目を迎えます。多くの若者らの記事やコラムと向き合ってきました。掲載された記事やコラムに対して1、2年後に突然「大学を無事卒業し、日本航空に就職が決まりました」「大学院博士課程研究員として県庁で励んでいます」「2年前UCLAに留学、去年沖縄に帰郷、現在那覇市役所に勤務しています」などのメールに触れ、生きがいとはそういうことをいうのだと自身で納得した。ことしも走り続け夢を追い求めます。特にロサンゼルスと沖縄の懸け橋となるような執筆活動に重心を置いて、まい進していきます。皆さん、たまには読後感をお寄せくださいね。

<アルゼンチン>大城リカルド/日系社会伝え続けたい
 昨年亡くなられた、らぷらた報知のベテランジャーナリスト・高木一臣さんがお手本を見せてくださったように、人生の最後まで目標を持って歩んでいきたい。アルゼンチンの日系社会のうち7割を占める沖縄系は、ほとんど2世、3世のしっかりした指導の下で活躍しています。私はことし、これまでより定期的にこの日系社会の状況、または国の全体についても紹介し続けていくため頑張りたいと思います。
 去年は、アルゼンチンが13年ぶりとなるデフォルト(債務不履行)を再び起こし、目先は現在のポピュリスト政権の下で暗いが、ことし10月の大統領選では政権交代も予想され、状況がある程度好転することも期待されます。
 しかし、アルゼンチンは複雑な面白い社会です。アルゼンチンに関するニュースは政治・経済においての伝えづらい、恥ずかしい話もあれば、世界の前に誇りを持って見せられるものも確かにあります。
 アルゼンチンの国富は天然資産にあらず、人材にあると思います。この日系社会を含むアルゼンチンについて、沖縄の読者にアピールするような記事を次々出したいと思います。

<バージニア>鈴木多美子/米国でできること模索
 昨年、私にとっての大きな収穫は秋に帰郷した際、初めて目にした辺野古新基地予定地を確認したことと熱き闘士たちの闘いぶりを拝見したことだ。沖縄の抱える問題の解決策として県民一丸となって中央にひるまず声を上げていくことに尽きると実感した。今、米国に住む私ができることは何かを模索中でありことしの課題としたい。
 また、昨年春から秋に続けて行われたワシントンDCでの沖縄伝統芸能をはじめ音楽などが総結集され、幸運にも沖縄のトップアーティストらの芸の数々を堪能でき、沖縄の芸能は外国の人たちをも魅了させるものだと再確認した。それは一ウチナーンチュとしては素直に喜び、誇りだと感じた。
 さて、通信員として昨年は年初めのラスベガス県人会の方々の取材をはじめ、多くの人たちとの交流などがあった。協力してもらった県人会、取材に応じてくれた方々に感謝したい。ことしも米国の県人会情報や県系人の活躍ぶり、そしてアメリカの面白ニュースなどが伝えられたらと思う。

<シンガポール>遠山光一郎/若者に希望と夢を
 2015年、シンガポールを含めたアセアン諸国は貿易、投資、人の流れを加速させる地域統合に進む。より経済・文化交流が進むのは間違いなく、世界的に見ても経済発展のダイナミズムを最も感じる地域となろう。その発展の裏で失っていくもの、社会環境や人の価値観の変化も起きる。ウチナーンチュとして、より身近な目線で15年も沖縄にアジアの生の情報を伝えていきたい。連載中の「アジア輝く息吹-ウチナー新時代」も15年初旬にはアジアで活躍する方々の紹介100人を突破する。今後もアジアで活躍するウチナーンチュや沖縄に関係のあるアジアの方々の紹介を通して、沖縄の若者に希望と夢を、また沖縄とアジアを近づけていくことに微力ながら頑張っていきたい。
 シンガポールも15年は「SG50」という独立50周年という記念すべき年になる。そのシンガポール、アジアに私も20年。アジアと沖縄のために何ができるか真剣に考え行動する年にしたいと思う。政権交代を果たした沖縄。しかしアジアの成長を取り込み、アジアとの交流を促進するということは今も昔も変わらないはずだ。沖縄とアジアをつなげる役割を担う。この夢の実現のために、15年はずっとワクワクできる年としたい。

<イタリア>仲宗根雅則
<ロサンゼルス>当銘貞夫
<アルゼンチン>大城リカルド
<バージニア>鈴木多美子
<シンガポール>遠山光一郎