未来は明るいのか、暗いのか
斜陽産業と言われる出版業界で書籍編集を生業としていた頃、定年まで自分の職業は存在しないんじゃないかと思っていた。かといってどうしていいかも分からず、日本の未来って暗いなあーとぼんやり嘆いていた。
しかし会社を辞めて出版に限らず仕事を頂くようになったら、そんなことは考えもしなくなった。嘆いている余裕などないのもあるが、どうやら暗いのは特定の業界の将来に限ったことで(もちろんそこには思い込みもあるだろう)、私自身とか日本とかは、まったく別の話なのかもしれないと思い始めたのである。
<悪い方向に進んでいるのはあなたの組織だけであって、社会全体は進化してるんですけど?>
本書に収められたカリスマブロガー・ちきりん氏の言葉に膝を打つ。
2万7千にもおよぶツイッターでの発言をもとに生まれたこの本には、「モノゴトの見方を変える」というサブタイトルが付いている。
<「最近の若者はダメだ」と言ってる中高年やシニアは、「自分が、最近のイケてる若者に相手にされていないだけ」ということに気がつかない。>
<「まともな学生が応募してこない」とか言ってる企業も同じ。まともな学生は、あなたの会社を選ばなくなってるだけです。>
会社員時代の自分がこれらの言葉を耳にしていたら、自分の周囲をまったく違う視点で見ることができただろうか。
先日、かつての同僚(現在も出版業界で働く)にこれらを熱く語ってみたのだが、はかばかしい反応は得られなかった。受け取る人の立つ場所によって、言葉は形を変える。
<最近、「未来は明るい!」って言ってる人と、「先行きが不安」みたいに言ってる人って、きれいに分かれてきてる。(後略)>
どこの場所であろうと、前者の方が幸せであることは間違いない。
(大和書房 1000円+税)=日野淳
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日野淳のプロフィル
ひの・あつし 1976年生まれ。出版社で15年間、小説、音楽、ファッションなどの書籍・雑誌の編集に携わり、フリーランスに。今、読む必要があると大きな声で言える本だけを紹介していきたい。
(共同通信)
大和書房
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