『トラッシュ! この街が輝く日まで』


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勧善懲悪に徹した子どもたちの痛快冒険活劇

 『愛を読むひと』『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のスティーヴン・ダルドリーの新作だ。人気脚本家リチャード・カーティス(『ラブ・アクチュアリー』『ノッティングヒルの恋人』)が、アンディ・ムリガンの児童向け小説を脚色している。

 ブラジルのリオデジャネイロを舞台に、ゴミ拾いで生計を立てている3人の少年が、ワケありの財布を拾ったことを契機に政治と警察の腐敗に立ち向かう! とはいえ、社会派というよりは、勧善懲悪に徹した痛快冒険活劇だ。
 デビュー作『リトル・ダンサー』も含め、少年の成長を描くことには定評のあるダルドリー監督だが、緻密に計算されたウエルメードな作風が持ち味の彼にとって、スラム街に生きる少年たちをビビッドに活写することが不可欠な本作は、必ずしも得意分野とは言えなかったはず。それでも、ぎこちなさを微塵も感じさせないところは、失敗作が1本もないばかりか舞台演出でも評価の高い彼の、器用さの表れだろう。
 加えて、スラム街や墓地を立体的な迷路のように演出することで、ストーリーの核である“宝探し”を視覚化してみせるビジュアル設計は、前作『ものすごく~』での“母の包容力”の視覚化にも通じる。ちょっとマネのできない芸当である。前作に負けない子供映画の傑作だ。★★★★★(外山真也)

 【データ】
監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:リチャード・カーティス
出演:マーティン・シーン、ルーニー・マーラ
1月9日(金)から全国公開
(共同通信)
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。

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外山 真也