貴重な映像から環境問題を考える
これも、シネコン時代を象徴しているのだろうか。ファミリー層を意識し、外国アニメ映画が日本語吹き替え版での上映が主流になったように、ネーチャードキュメンタリーも日本語ナレーション付きが定番に。製作者側がわざわざ解釈を受け付けたくないという思いから極力せりふや説明を排除したというのに…だ。
まぁ本作の場合は、ストーリー性をもたせようとフィクションも加えたところも引っかかる。人間に飼われていたフサオマキザルが、飛行機事故に巻き込まれてアマゾンに不時着。その猿の目を通して、知られざるアマゾンの生態を描くだけでなく、野生に目覚めた猿が人間界と決別するという展開。そのテーマ、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』と同じ。つまり、王道じゃん。
でも、この余計な枝葉を取っ払って見れば、そりゃもう素晴らしい映像なのだ。自然と調和して身を守る動物たちの構造の不思議。目を背けてはいけない弱肉強食社会であるという現実。そこでたくましく生きていく彼らの知恵。学術的にも貴重な瞬間を捉えた映像であることは間違いないが、環境問題を考えたり、つい人間社会に置き換えてみたりと、様々なことを想起させられることウケアイ。
なので! できればアニメが字幕版と吹き替え版があるように、観賞時にナレーションの有り・無しの選択ができないだろうか。★★★★☆(中山治美)
【データ】
監督:ティエリー・ラコベール
音楽:ブリュノ・クーレ
ナレーター:田中直樹(ココリコ)
1月17日(土)から全国公開
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中山治美のプロフィル
なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)
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