『家飲みワインガイドブック』佐藤陽一著


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基本は押さえて敷居が低い
 突然ですが、新年の目標は決めましたか? 私は「2015年はソムリエの資格取得の年にしちゃおかな」と軽い気持ちで思いつきました。しかし、何を隠そう私は「サン、ジョベーゼ……キャンディ……あ、キャンティ・クラシコ。……寝るか」レベルのド素人。右も左も分かりません。そんな私でも、ワインは超奥深いらしいというのは耳にしたことがあります。なんでも、香りの表現だけでも幾多とあり、中には「濡れた犬のような香り」なんていう表現もあるんだとか。なんだそれ! 嗅いだことないよ濡れた犬!っていうかそもそも美味いのか濡れた犬!と謎が深まるワインの世界。

 千里の道も一歩からと、新年早々購入したのが本書。「NHK」と表紙にあると、なんとなく信頼できるという購入者のブランド志向が透けて見えるセレクトですね。本書はソムリエ・佐藤陽一による「今夜のごはんに合わせるワインガイド」……ずいぶんカジュアルに聞こえますが、そこはソムリエ。ワインの味わいの法則や、料理とワインの組み合わせの法則に基づいた、意外と本格派。「白身は白! 赤身は赤! 直感でいいんですよガッハッハ」みたいな丼勘定ではなさそうです。
 赤・白・ロゼ、それぞれの製法や産地の紹介、代表的な品種の解説など簡単に、だけど要所要所をきちんと押さえた上で、いよいよ始まる「今夜のごはんとの組み合わせ解説」。合わせるワインを選ぶポイントは、「料理の色×温度×味」なんだとか。色の濃淡、熱いか冷たいか、コッテリしてるかアッサリしてるかでおのずと合うワインがわかるんだって。例にあげている料理もポテトサラダに冷しゃぶ、チンジャオロースにカレーと、ほんとに家ごはん。こんなのに合わせるなんて邪道!とか言われないのがうれしい。
 そう、この本、基本はキチッと押さえながらも敷居が低いのが魅力的。なんといっても「マリアージュ」って言葉、出てきませんからね。聞いたことあります? 料理とワインのベストマッチを「マリアージュ」って言うんです。おしゃれですね。
 そのほかにもワインの世界には「ワイン語」という日本語とは違う新しい言語があるように思えます。先述の「濡れた犬」もしかり、「血がワイン」でおなじみ川島なお美先生のお言葉「落ちそうで落ちない夕日の味」なんかもそうですね。我々素人はそういうおしゃれな言葉を聞いた瞬間、ワインが遠くなる。通じない言葉を話す異国の人たちの、異国の文化になっちゃうんです。
 でも本書は、それを一切感じさせない。著者の信念なのか編集の人が一線を越えないように徹底していたのか、それとも素人にワインを紹介する際のワイン業界の常識なのかはわかりません。でもこの一冊との出合いで、ぐっとワインの世界がわかりやすく、身近に感じられるようになりました。本書と私のマリアージュですね。
 最後のページを閉じる頃にはやる気スイッチもポチッと入り、「目標を立てたからにはまずゴールをきちんと確認しなくちゃ!」とソムリエの資格試験についてようやく本格的に調べ始めました。まずは応募資格!「第1次試験実施日において、ワインおよびアルコール飲料を提供する飲食サービス業を通算5年以上経験し、現在も従事している方」。え? 私? 2カ月目。……ワインと私のマリアージュはまだまだ先になりそうです。よし、寝るか。布団と私のマリアージュ。
 (NHK出版 1000円+税)=アリー・マントワネット
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アリー・マントワネットのプロフィル
 アリー・マントワネット ライターとして細々と稼働中。ファッション、アイドル、恋愛観など、女性にまつわる話題に興味あり。尊敬する人物は清水ミチコ。趣味はダイエット、特技はリバウンド。
(共同通信)

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