『ビッグ・アイズ』 カラフルでポップな世界観に圧倒される


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 STAP細胞や佐村河内守氏の事件が起きた2014年は、“偽物”という言葉に集約される年だった。これは、今の日本社会が抱えるひずみが噴出した結果だったように思える。そんな中で日本公開されるティム・バートンの新作もまた、“偽物”がキーワードになっている。

 1960年代のアメリカのアート界で起きたスキャンダル。一大ブームを巻き起こしていた絵画シリーズ“ビッグ・アイズ”の作者は夫ではなく妻の方だったという実話の映画化だ。だから今回は、得意のファンタジーではない。ウソのような本当の話だけど…と書きたいところなのだが、昨年の日本の出来事を考えると、むしろリアルでよくある話に思えてくる。
 とはいえ、そんなことはティム・バートンとも映画とも全く関係がない。ファンタジーであろうとなかろうと、バートン印全開なのだ。特に60年代のファッションや、道とりわけ坂道を軸に据えた街並みや風景の美しさに息をのみ、そのカラフルでポップな世界観に圧倒される。VFXが目立たない分、彼の確かな映像センスがストレートに伝わってくる。
 もちろん、夫婦を演じるエイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツも素晴らしく、2人とも60年代が本当によく似合っている。★★★★★(外山真也)

 【データ】
監督:ティム・バートン
出演:エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ
1月23日(金)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也