「分からない」が多すぎて
「私はシャルリ」なのかどうか考えているうちに、イスラム国による人質事件が起こって、頭の中はこんがらがるばかりである。
どちらも何が起こったのかは分かるとしても、なぜ起こったのかを理解するための自分の知識の少なさ、浅さに愕然とするばかりだ。
毎朝、新聞を広げてはうなだれる。1面に大きく扱われる事件、事故。円や株価が上がったり下がったり。どうなっているかに付いていくのがやっと。スマホを使って、なぜ? を調べると、あっという間に午前中が終わってしまう。
ここ10年以上、自分の専門にかまけて、世の中の動向に目を向けてこなかったことが原因だとは思うのだが、それにしてももうすぐ不惑と呼ばれる年齢である。このまま分からないことが多いまま、頭も心も衰えていって、世の中から退場してしまうのか。それはとても寂しい。そしてもったいない。
とそんなモードで書店を訪れたら、出合ったのが本書である。
「なんで水には色がないの?」
えーと、確か光の屈折とかそういう理由だったと思うのですが、うまくは説明できません。
「どうしてお金持ちと貧乏人がいるの?」
それはやっぱり収入の多い人と少ない人がいるからじゃないでしょうか。
まったくもって、誰にも説明できないレベルなのである。
その他、本書では「インターネットってなに?」「聖書ってなにが書いてあるの?」「石油王ってどんな王様?」「どうして人は死ぬの?」などなど、自然科学から文化、政治経済まで36の疑問が取り揃えられている。
もちろん質問には回答と親切な解説が用意されている。どこが親切かというと、丁寧に深くではなくて、あくまで誰かに(主に子どもに)質問をされたらどう答えるかという前提に立っているところだ。
「大人って楽しい?」という身もフタもない質問に対しては、答えの前に、まずは3つのポイントを話してあげることから始めよう、とある。1、幸せになるための学問がある。2、成長と人との関わりが重要。3、学びの機会は大人にこそ必要。そして答えは「学ぶことをやめなければ、楽しい大人になる」。
正しい。正しすぎると思います。
その正しさから大きく逸脱してしまった自分は、今、必死で大人になろうとしている。
(文響社 1280円+税)=日野淳
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日野淳のプロフィル
ひの・あつし 1976年生まれ。出版社で15年間、小説、音楽、ファッションなどの書籍・雑誌の編集に携わり、フリーランスに。今、読む必要があると大きな声で言える本だけを紹介していきたい。
(共同通信)
文響社
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