『フェイス・オブ・ラブ』


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映画的な“どんでん返し”に心を揺さぶられた
 掘り出し物である。アネット・ベニングとエド・ハリスが主演し、故ロビン・ウィリアムズが脇で支える本作は、俳優の演技を楽しむ映画だろうと油断していたら、ラスト、あまりに映画的な“どんでん返し”に激しく心を揺さぶられた。

 30年間連れ添った最愛の夫を5年前に事故で亡くし、いまだに喪失感から抜け出せないニッキーが、夫と瓜二つの美術教授・トムと出会って恋に落ちるという、中年男女のラブストーリーである。ニッキーが夫のお気に入りだった美術館で偶然トムを見かけたその日から、彼女の視線はひたすらトムを探し、追いかけ続ける。本作は、ニッキー(さらにはニッキーに思いを寄せる隣人やニッキーの娘といったニッキー側に属する登場人物たち)が、トム=夫の幻影を“見る”映画なのだ。
 ところが、ラストのたった1つのカットによって、全てが反転する。そして、本作の世界観を作り上げてきた頻出するイメージ――プールや水、反射や映り込み、ガラス越しの映像など――が、この1カットのために周到に計算されたものだったことに気づかされるのである。小説でも舞台でもテレビの連続ドラマでも不可能な、極めて“映画的”などんでん返しと言えるだろう。見事! ★★★★★(外山真也)

 【データ】
監督:アリー・ポジン
出演:アネット・ベニング、エド・ハリス、ロビン・ウィリアムズ
2月7日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也