浦添グスク軸に整備を 景観まちづくりフォーラム


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浦添グスクを中心としたモノレール駅周辺の整備を議論したパネルディスカッション=3日、浦添市てだこホール小ホール

 【浦添】浦添市は3日、「景観まちづくりフォーラムinうらそえ2015」を市てだこホール小ホールで開いた。沖縄都市モノレール延長整備で景観が急速に変容していく状況を契機に、世界遺産追加登録を目指す浦添グスクを中心としたまちづくりの方向性を議論した。神聖や静寂といった特性を軸に周辺整備を展開することや、「浦添考」を著した伊波普猷に脚光を当てることなどが提起された。

 国際記念物遺産会議(ICOMOS)国内委員会理事などを務める京都府立大学の宗田好史教授(都市・地域計画学)が基調講演し、戦争による破壊から文化・自然遺産を守るという世界遺産の精神を解説した。「戦火にさらされた浦添グスクを祈りの場として捉えることは、ユネスコが望む文化都市浦添を発信できる」と語り、「世界遺産のより深い意味を考え、歴史の空間の中に美しい街並みを造っていくことだ」とまちづくりの視座を示した。
 パネルディスカッションでは、浦添グスクのふもとに開業されるモノレール「浦添前田駅」周辺の在り方が議論の中心になった。沖縄しまたて協会技術環境研究部の友寄孝部長は「具象化したモニュメントを容易に駅前に置くのはやめてほしい。駅を出発点に集落へ人をいざなう仕掛けが必要で、地域を知るプロデューサーの存在が欠かせない」と指摘した。
 フリーアナウンサーの幸地優子さんは「政治、経済、文化の基盤がそろった浦添市は、その上に心豊かな生活空間を生み出せる」と語り、松本哲治市長は「グスク城下町の字仲間には数多くのヒージャー(井戸)があり、『水』はキーワードになる」と集落と関連付けた駅前整備に意欲を見せた。
 池田孝之琉球大名誉教授は「浦添グスクのスピリチュアル性をバッファーゾーン(間衝地帯)まで広げて整備する。物語性を持たせて地域資源をまとめていくことが大事になる」と総括した。