『圧殺の海 沖縄・辺野古』 戦争を知る高齢者たちの反対運動


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 「イスラム国」問題しかり、何か事件が起こる度に世間の関心は一カ所に集中。そんな時に必ずお上とやらは、ドサクサに紛れて法案を通しがちである。と思って本作を観てみたら、ホラ、やっぱり!

 本作は、沖縄・辺野古での新基地建設に反対する人たちVS.警察&機動隊&海上保安庁の攻防戦を追ったドキュメンタリーだ。同基地をめぐっては、先ごろ、もみ合いの最中、倒れた高齢の女性が頭を打ち、救急車で運ばれたことがニュースにもなった。
 でもそれは氷山の一角であることが本作を見ると良く分かる。撮影は、昨年夏から11月に普天間飛行場移設反対派の翁長雄志氏が県知事に当選するまでを追っているが、その間にもやはり、おばぁが倒されて頭を打つシーンが! 反対派の面々は、戦争の悲劇を知る高齢者ばかり。彼らが体を張って反対運動をしている姿を見るだけでも、いたわらなければならない人たちが安心して暮らせない国って何なんだ!?と怒りでいっぱいになり、涙すら出てしまう。
 イスラム国と沖縄の基地問題。当然ながら、共に米国の意向が大きく左右するだけに密接につながっている。イラク戦争の時は沖縄から多くの米兵が現地に赴いただけに、今後も油断大敵だ。その沖縄で何が起こっているのかを知る絶好の機会。そしてここでも、現状を伝えようと最前線で奮闘しているのは藤本幸久&影山あさ子両監督のようなフリーの映像作家たちであることを強調したい。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督:藤本幸久、影山あさ子
撮影:栗原良介、藤本幸久、影山あさ子、比嘉真人
ナレーター:影山あさ子
全国順次公開中
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き
(共同通信)

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中山治美