中部農林高校福祉科3年の生徒ら2グループが、児童虐待をテーマにしたパンフレットと紙芝居をそれぞれ作成した。パンフレットには「言葉より先に手が出ていませんか」などの問い掛けと、かわいらしいロボットのキャラクターが描かれ、児童虐待について考えることを促している。紙芝居は虐待を当たり前の生活だと感じている小学生を登場させ、紙芝居を見た子どもたちが虐待に気付いてもらうことを狙った内容だ。生徒らはパンフレットの置き場所と紙芝居を発表する場を探している。両グループとも課題研究の授業の一環で作成した。
■気付いて
パンフレットを作成したのは、徳田沙月さん(18)と山城千佳さん(18)、岸本麗奈さん(18)、山内美優さん(18)の4人のグループ。「児童虐待について、あまり知られていないのではないか」と課題研究を通して気付いたことがきっかけでパンフレットを作成した。虐待を考えたり、気付いたりするきっかけになってほしいとして、パンフレットには難しい専門用語や虐待に関する「解説」は取り入れなかった。パンフレットを手のひらサイズにしたのも、周囲の目を気にせず、持ち帰りやすくするためだ。
徳田さんは「『子どもだけがかわいそう』『虐待する親が悪い』など親子関係の問題だけに終わらせてはいけない。周囲の環境など広い視野に立って考える必要がある」と指摘する。核家族や一人親世帯が増えたことで、保護者の負担が増えたことなどを問題の本質として見る。
皆、「虐待の事例について調べると悲しくなることが多かった」と研究を振り返るが、それでも「やってよかった」と全員、充実した表情を見せた。
■ゆいまーる
紙芝居の主人公は家族の中で1人だけ、服を買ってもらえず、ご飯も食べさせてもらえないひなちゃん。物語は虐待が「当たり前の生活」となっているひなちゃんが、周囲の人と相談して「よくない生活」だと気付いたところで終わる。
子ども向けにこの紙芝居を作った西原瑠君(17)、松田沙莉亜さん(18)、嘉陽美月さん(18)、石原幸奈さん(18)のグループは語る。「子どもは家庭で起きていることが『当たり前』だと思いがちだが、そうではないことを伝えたかった」。紙芝居では近所の人がひなちゃんから相談を受ける。石原さんは「虐待は周りの人と関わることで解決できる。その例として近所の人を登場させた」と工夫点を挙げた。
石原さんは「虐待から子どもを守るためには地域の人たちとの交流が不可欠だ」と強調する。「地域の『ゆいまーる』で支え合おう」。松田さんの一言に、全員がうなずいた。
(安富智希)