『みんなの学校』


社会
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被写体の力に圧倒される

 大阪市にある公立の大空小学校の取り組みを追った、関西テレビ制作の教育ドキュメンタリーだ。好評を博したTVドキュメンタリーを劇場用に再構築したものだから、厳密には“映画”ではない。少なくとも「映画を撮るんだ」という作り手の気概は感じられない。それでも本作には、類まれな被写体の力があり、見る者はその力に圧倒され、心を揺さぶられることだろう。

 大空小学校は、隣の小学校の児童数が増えすぎたため2006年に開校した全校児童220人の小さな学校。にもかかわらず、発達障害のある子や他の学校で厄介者扱いされた転校生など特別支援の必要な子供が30人以上も通う。そんな中で児童一人一人と地道に向き合い「不登校ゼロ」を目指す取り組みからは、大人も学ぶべきことが多く、自分もこういう学校に通いたかったと思わずにはいられない。
 だが、それ以上に本作を支えているのは、木村泰子校長の教育者としてのブレない信念と知性、そして子供たちである。子供というのは不思議だ。かつて羽仁進監督の『教室の子供たち』がそうであったように、時にカメラなど存在しないかのように自然にふるまう。長期にわたる密着取材の成果だろう。ドキュメンタリーを撮るのに必要なのは、時間と情熱だと教えてくれる。映画か否かはさておき、たくさんの人に見てもらいたいと思う。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督:真鍋俊永
撮影:大窪秋弘
出演:大空小学校のみんな
2月21日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)