『女神は二度微笑む』


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完成度の高い脚本でどんでん返しの衝撃

 『きっと、うまくいく』『チェイス!』など近年日本で公開されるインド映画は、どれも脚本のレベルが高い。本作もしかり。張りめぐらされた伏線、練られた構成、どんでん返しの衝撃…。ドメスティックな違和感もほとんどなく、特に本作には歌や踊りも出てこないから、“マサラムービー”のイメージを完全に覆される。

 コルカタを舞台に、失踪した夫を捜しに来た身重のヒロインが、国家情報局の横やりを受けながら失踪の謎に迫っていくというもの。意表を突く展開によって世界観が反転するシャマランも真っ青のサスペンス映画なので、具体的な紹介はヒントだけに留めたい。例えば、ヒロインの相棒となる新米警官の何げない自己紹介の会話「コルカタではみんな、本名と愛称の2つの名前を持っている」「2つ顔があるのね」が、最後に効いてくる。
 そういう伏線がゴロゴロ転がっている映画で、作り手は観客に謎を解くカギをしっかりと開示してくれている。だが、絶妙の視点の操作によって、我々はまんまとダマされることになるのだ。恐らく映画は、小説以上に視点の操作が有効なメディアだろう。
 脚本の完成度に比べると演出にはやや無駄が多いものの、それまで見えていたものが全く違う景色に様変わりしてしまう本作のオチは、『アンブレイカブル』や『アザーズ』にも引けを取らない。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督:スジョイ・ゴーシュ
出演:ヴィディヤー・バーラン、パラムブラト・チャテルジー
2月21日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

外山真也