屋我地のベニアジサシ 繁殖ゼロ、飛来も減少


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 【名護】多くの鳥類の餌場や繁殖地となっている名護市の屋我地島で2014年、ベニアジサシの営巣が確認されず繁殖が見られなかったことが、環境省やんばる自然保護官事務所の調査で分かった。06年の調査開始以降、繁殖ゼロは初めて。04年には300羽以上の営巣が確認されていたといい、渡り鳥の飛来環境を危惧する同事務所は営巣放棄や繁殖失敗の要因把握と対策の調査に乗り出す方針だ。

 屋我地島の周辺は干潮時には干潟が広がり、アジサシをはじめ、シギ、チドリ類など渡り鳥が訪れる。島は1976年に国指定鳥獣保護区となっている。しかし、昨年の調査ではベニアジサシについて繁殖が全く確認されなかったことに加え、毎年8月に100羽程度あった飛来数も20羽以下と過去最少だった。
 これらを受け、同事務所はアジサシ飛来の現状周知や繁殖地の保全方法を考えようと、初めての地域学習会となる「アジサシ類保全ワークショップ」を13日夜、名護市済井出公民館で開いた。
 学習会には50人余りの住民らが参加。カラスやハトなどの増加による飛来減少、水上バイクや釣り人ら海洋レジャーによる人の接近が繁殖に悪影響を及ぼしている可能性などについて指摘があった。沿岸域の岩礁への出入りを防ぐ看板やロープ設置を求める声のほか、「アジサシ飛来、繁殖の島を県内外に発信したい」と観光資源としての活用に期待する声も多かった。
 同事務所の山本以智人自然保護官は「アジサシの飛来環境を守ることについて、初めて地域住民の意見を聞くことができた。今後は鳥類の専門家や漁師、レジャー業者ら全体での連絡会議も必要だろう」と述べた。

屋我地島に飛来するベニアジサシ(環境省やんばる自然保護官事務所提供)
繁殖状況の推移