カーボンナノチューブ製造へ NTIが技術確立


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 新素材開発や金型製造のナショナル・テクノロジー・イノベーション(NTI、うるま市、安倍佳照社長)は19日、県内で初めてカーボンナノチューブ(CNT)の製造技術を確立したと発表した。

環境に負荷をかけない天然ガスを原料に、新たな触媒を開発して製造効率を上げることに成功した。CNTは高い導電性や強度を持つ新素材で、OA機器や自動車の外板、電磁波を遮断する電磁波シールドなどさまざまな分野への応用が進んでいる。今後は親会社の共栄エンジニアリング(新潟県)と連携し、素材から成形部品まで沖縄での一貫製造を目指す。
 NTIは1年にわたる試作を経て、触媒を開発。天然ガスから従来の100倍の速度でCNTを量産できる技術を確立し、大手メーカーによる従来の工程よりコストを抑えた。年間10トンの生産が可能。
 さらに製造過程で発生する水素ガスを熱源として有効活用することも検討している。生産量が増大すれば、将来的に水素ガスを燃料電池の燃料として販売していくことも視野に入れている。原料の天然ガスは、沖縄電力からの液化天然ガス(LNG)の供給を見込んでいる。
 安倍社長は沖縄での生産について「東南アジア市場を見据えた場合、地理的に有効だ」と指摘。NTIは県が指定する国際物流拠点産業集積地域うるま・沖縄地区の「サポーティング産業集積促進ゾーン」に立地しており「県金型技術センターとも協力しながら、沖縄発の付加価値の高い製品をつくっていきたい」と意欲を語った。

<用語>カーボンナノチューブ(CNT)
 炭素原子が結合して管状になった物質で、直径は0・5~200ナノメートル(ナノは10億分の1)。鉄に比べ100倍の強度があり、銅の10倍の熱、100倍の電気を伝達できる。樹脂に溶かしたり、金属などに混ぜたりすることで、高機能の製品開発が可能。電子工学や繊維、建築、環境、医療など、さまざまな分野で製品化の研究が進んでいる。

NTIが製造したカーボンナノチューブ
カーボンナノチューブの製造技術確立について発表するNTIの安倍佳照社長(中央)ら=19日、県庁