介護の質で経営安定 県老健大会


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 第21回県介護老人保健施設大会(県老人保健施設協議会主催)が27日、那覇市のホテル日航那覇グランドキャッスルで開かれ、兵庫県立大大学院主任教授の小山秀夫さんが基調講演した。2015年度介護報酬のマイナス改定の影響で施設経営を危ぶむ現場の懸念に対し、小山さんは入所者の在宅復帰や在宅療養支援、「口から食べる楽しみ」を支える取り組みを強化することで「(減額される報酬分は)取り戻せる」と制度の仕組みを説明。管理栄養士など人員の適切な配置や介護の“質の向上”を訴えた。

 旧厚生省病院管理研究所研究員で、老人保健施設(以下老健)の制度設計にも関わった小山さんは「老人保健施設の新たな挑戦」と題して講演した。老健が本来自宅復帰を支援する施設であるにもかかわらず、他施設や家庭が受け入れできないなどの理由から長期入所になっている実態を指摘し、「長期お預かり(の老健)施設はいらない。改革が求められている」と断じた。
 小山さんは老健の介護報酬改定率が全体で2・27%引き下げになることに触れ、今後の施設運営は(1)在宅復帰・在宅療養支援(2)リハビリテーション機能の強化(3)みとりへの対応(4)口腔(こうくう)・栄養管理の充実-などが必須になることを説明した。
 在宅復帰については、入所時に退所に関する相談を積極的に行う施設は自宅復帰率が高い実態を挙げ、「入所前後に退所の相談を始めないと自宅には帰れない」と強調した。新介護報酬では「(自宅に)50%帰せば報酬はプラス、30~50%でとんとん、30%以下はつぶれる」と語った。
 小山さんは新介護報酬で、管で栄養を摂取する胃ろうを外し「口から食べる楽しみ」を充実させる支援が評価され、加算が大きくなる仕組みを説明した。食事中に誤えんしないよう「食事観察」することが加算対象となることから、「施設みんなが理解して、多職種で取り組まないといけない」と強調。歯科衛生士による口腔衛生管理の重要性も指摘した。
 大会は「地域包括システムにおける老健の役割~活かせ! 老健のリハビリテーション機能を!」をテーマに、分科会やポスターセッションもあった。

介護報酬改定に関する基調講演や、実践を報告する分科会が開かれた第21回県介護老人保健施設大会=2月27日、那覇市のホテル日航那覇グランドキャッスル
基調講演する小山秀夫さん=2月27日、那覇市内