人々の表情生き生き きょうから伊江島写真展


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 【伊江】城山をバックにあどけなく笑う子どもたち、生き生きとした表情で馬車に乗る青年―。伊江島の土地闘争や反戦平和運動のリーダーとして知られる故阿波根昌鴻さんが1950年代に島で撮影した写真の展示会「あの頃の伊江島写真展~人々と風景~」が2日から伊江村農村環境改善センター1階ホールで始まる。

これまで公開されてきた闘いの写真と違い、島の人たちの日常や笑顔を切り取った初公開の写真50点を展示する。「ヌチドゥタカラの家」館長の謝花悦子さんは「写真には阿波根が守ろうと闘ってきた『人間』が写っている」と写真の意義を語った。
 阿波根さんは、土地闘争を記録しようと1955年ごろから写真を撮り始めた。米軍に土地を奪われまいと「こじき行進」で抗議する村民や米軍の不発弾で亡くなった村民など島の悲惨な現状を写真に残してきた。一方、島で唯一カメラを持っていたという阿波根さん。村民から記念写真を頼まれることもあり、村民の暮らしや表情など生き生きとした写真も多く撮影してきた。
 2011年、県内外などの研究者らでつくる「阿波根昌鴻資料調査会」が阿波根さんが以前住んでいた自宅で1200コマのネガフィルムを確認。反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」が14年で開館30年を迎えたことを記念し、その中から50点を厳選して展示することになった。
 調査会の委員や今回の展示会の企画を務める琉球大学教育学部の小屋敷琢己准教授(哲学)は「写真はどれも阿波根さんが被写体の村民に真っすぐ向き合って撮ったもの。子どもを撮るときは子どもの目線で撮影しているのが分かる。阿波根さんの表情が被写体にも写る。阿波根さんだからこそ撮れる写真だ」と評価する。謝花さんは「貴重で懐かしい写真もたくさんある。多くの人に見に来てほしい」と話した。
 写真展は入場無料で8日まで。午前9時~午後8時まで(2日は正午から)。問い合わせはわびあいの里(電話)0980(49)3047。

阿波根昌鴻さんが写した村民の写真。あどけなく笑う子どもたちの後ろには島のシンボル「城山」が見える=1950年代後半、伊江島(わびあいの里提供)
馬車に乗って笑う青年。阿波根さんは構図にもこだわって撮っていたという=1950年代後半、伊江島(わびあいの里提供)