『パリよ、永遠に』 会話劇にこだわり大人の演出


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 ルネ・クレマンの『パリは燃えているか』でも扱われた、ヒトラーによるパリ爆破命令が遂行されなかった史実の舞台裏を描く。「パリは燃えているか」というのは、1944年8月25日にヒトラーが電話で発した言葉だ。その前夜に、爆破を命じられたドイツ軍パリ防衛司令官とパリを守りたい中立国スウェーデンの総領事との間で、どんなやりとりがあったのか? フランスの舞台劇を、ドイツの『ブリキの太鼓』の巨匠シュレンドルフが映画化した会話劇だ。

 ここでは史実が一晩の出来事に凝縮して描かれるが、窓の外で空が次第に白んでいく時間経過を過度に強調したりはしない。BGMも2人の緊張感に満ちた駆け引きをあおることはない。声高ではない、大人の演出である。
 だが、それ以上に評価したいのが、室内をメーンに据えた会話劇にこだわっている点。会話は映画的でないがゆえに、優れた映画作家たちを刺激してやまないアイテムだ。シュレンドルフも、2人のどちらかを立たせたり座らせたり、あるいは酒やタバコ、鏡など小道具を駆使して、狭い室内に角度と奥行きを作り出してゆく。たちまち画面が息づく。時々映し出される夜のパリの景色も強烈なコントラストを放つ。そして何より、ラストシーンの爆破を免れた現代のパリの街並みが、見る者に圧倒的な感動をもたらすのである。★★★★★(外山真也)

 【データ】
監督:フォルカー・シュレンドルフ
出演:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ
3月7日(土)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也