【島人の目】プレジデントデー雑感


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 2月の第3月曜日は、2月生まれのワシントンとリンカーン両大統領の誕生日を合わせ、歴代の大統領をたたえる「プレジデントデー(大統領の日)」の祝日である。

 プレジデントデーにちなみ、ワシントン大統領から学べる教訓のエピソードを幾つか紹介しよう。
 188センチの長身で威風堂々としたワシントン大統領の手紙が、オークションで4万ドル近くで落札された。それは「建国間もない国家から給料をもらうのは心苦しいので辞退したい」という内容だった。「名誉ある地位」が「利益ある地位」に堕落したくないとの意思だったようだ。日本の国会議員の報酬は米国と比べてもかなり高く、歳費以外に文書通信費やら期末手当などが与えられ、世界一高額だと言われている。日本政府は消費税を上げ国民の生活を貧窮させ、貧困層を増えさせ、格差社会が顕著に表れてきた。国の借金1千兆円。この危機的状況の中、議員らは利益に甘んじるのでなく、自らの権限を少しでも底辺の人たちの救済に当て、議員職をワシントンのように名誉職として矜持(きょうじ)してほしい。
 さて、大統領就任中はお金もうけに縁がなく名誉ある地位にのみ固執していたワシントンは、実は大の酒好きのギャンブル好きで、賭博に興じ、大農園主となった時には、ウイスキー製造にも力を入れた。ギャンブルでは苦い経験があったのか「皆に礼儀正しくあれ」で始まるおいへ宛てた手紙には「賭博を避けること。これは全ての害悪を生み出す悪徳。健康と道徳に有害であり、貪欲の子であり、不公正な兄弟であり、危難な父。多くの一族を破滅させた。この憎むべき慣習は百害あって一利なし」と書かれていた。余談だが、沖縄へのカジノ導入を見送ることにした翁長県政の賢明な決断に拍手を送り、ワシントン大統領の言葉をさらに重く受け止めたい次第だ。
 さらに、人気の「ワシントンの斧(おの)と桜の木」の逸話は、「うそをついてはいけない」を教訓とさせるためにウィームズと言う牧師が書いた作り話だったという事実。その根拠は当時、桜の木はまだ米国にはなかったということだ。「正直でいるように」と説く牧師自身がうそをついてどうするのだという話だが、ワシントンDCの各土産店では「ワシントンの斧」のおもちゃや絵本が土産として売られ、今でも「正直は美徳である」は親から子に伝えられている。
(鈴木多美子、バージニア通信員)