『博士と彼女のセオリー』


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美談だけじゃないところが気に入った
 本作は、車椅子の天才物理学者スティーブン・ホーキング博士と元妻ジェーンの波乱の半生を描いたドラマ。一応、宣伝ではラブストーリーだと紹介しているが、甘い世界を期待して見に行くと良い意味で裏切られる。

 きっと、理系の博士に話を聞いたらまた違った人生ドラマに仕上がっていたのだろうが、原作が元妻の自伝ってのがポイント。博士が大学院在学中に難病を患って余命宣告を受けたことを知りつつ、結婚したジェーン。ところが夫の介護は想像以上。そこに子供3人の育児。さらに夫は学者として注目を浴びて、彼女の負担は増すばかり。
 そもそも、万物の創造主は神であると信じる妻と、宇宙の誕生を物理で解き明かそうとする夫じゃ、価値観の違いがありまくり。ゆえにお互い、新たなパートナーを見つけて離婚するに至るのだが、そんな不倫問題についても赤裸々に明かしている。コレ、妻の恨みつらみがだだ漏れ。しかもモデルとなった人物が生存しているワケで。なのに美談だけじゃないところが筆者のお気に入り。
 ご存じの通り、博士役のエディ・レッドメインが米アカデミー賞で主演男優賞を受賞。口さがない人は難病者に挑んだ俳優か…と言うけれど、本作を見れば納得するはずだ。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督:ジェームズ・マーシュ
原作:ジェーン・ホーキング
出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ
3月13日(金)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美