『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』


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信じた道を貫く姿が崇高で魅力的
 本年度米アカデミー賞で脚色賞を受賞した。受賞者のグレアム・ムーアのスピーチが大いに話題となりました。16歳の時、他人と変わっていて居場所がなく、自殺未遂した過去を告白した彼。同様の違和感で悩んでいる若者たちへ、自分のようにいつか輝くときがくるのだから、違っていても大丈夫と力強いメッセージを送ったのだった。でもコレ、映画を見てから彼の言葉を噛みしめるとさらに味わいが増すはず。

 主人公の数学者アラン・チューリングは、第2次大戦中、ドイツ軍が誇る暗号機「エニグマ」の解読に成功した天才であり、英国をはじめとする連合軍の勝利に貢献した立役者だ。だがしかし、周囲を見下し、我が道をゆくアランの言動は、解読チームのメンバーと軋轢を生み、なかなか成果を得られないことから軍からもにらまれる。さらに当時、英国では同性同士の性行為は犯罪だった。同性愛者であった彼は迫害を受けて自殺にまで追い込まれてしまう。
 名誉が正式に回復されたのは死後50年以上も経てからのこと。映画は、そんな彼の波乱の人生と、エニグマ解読に至るまでの経緯が描かれている。ムーアがチューリングに自身を投影させたのは明らか。チューリングは確かに変人かもしれないが、周囲に惑わされずに己の信じた道を貫く姿は、崇高で魅力的ですらある。
 主演はベネディクト・カンバーバッチ。女子がカッコイイと言っている理由はいまだ全くよく分からんが、本作で初めて良い役者だなと思った。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督:モルテン・ティルドゥム
脚本:グレアム・ムーア
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ
3月13日(金)から全国公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

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中山治美