【伊江】平和運動のリーダー故阿波根昌鴻さん。その阿波根さんのありのままの姿を写した写真集「天国へのパスポート~ある日の阿波根昌鴻さん~」が8日から販売されている。写真は千葉県の張ヶ谷弘司さん(68)が30年間伊江島に通い、撮り続けたもの。
張ヶ谷さんは「阿波根さんから、どんな困難な状況でも人は幸せになる権利があると学んだ。写真集はその恩返しになれば」と語った。11日で伊江島土地接収開始から60年になる。
1969年、写真の専門学校に通う22歳の青年だった張ヶ谷さんは阿波根さんと出会い、優しい言葉や温かい人柄に感銘を受けた。
写真を撮り始めたのは「自然とメモをするような感覚」で。通い続けるうち、徐々に「阿波根さんの100歳の記念に100枚の写真をプレゼントしたい」と考えるようになった。
以来、写した写真は約70枚。つえの上に顎を乗せて考えたり、ご飯を食べたり、寒い日に葉の落ちた木々の心配をしたりする、素朴で優しい“おじい”としての阿波根さんが写る。写真を公表する予定はなかったが、阿波根さんを知らない若い人に伝えたいと、編集と販売に踏み切った。
題名の「パスポート」には、沖縄戦で亡くなった阿波根さんの一人息子・昌健さんと阿波根さんの心をつなぐものとの意味を込めた。「彼は昌健さんに恥ずかしくないようにと人生を歩んできたと思う」と振り返る張ヶ谷さん。「子どもたちにも、こんなに優しく“偉いおじいさん”がいたということを心に刻んでほしい」と話した。
写真集は動画DVD付きで2500円。問い合わせはわびあいの里(電話)0980(49)3047。(田吹遥子)