一見超変化球だが中身はシンプル
『週刊少年ジャンプ』に連載中、子供たちに大人気の漫画の実写映画化だ。月の7割を破壊し、1年後には地球も破壊すると予告した謎の超生物が、進学校の落ちこぼれクラスに担任教師として赴任、一方で生徒たちは国家からその生物の暗殺を託されるというもの。人気の理由は、“暗殺”と“教室”という相いれない素材を組み合わせた設定の妙(『セーラー服と機関銃』や『スケバン刑事』と同じ発想)と、それでいて金八先生ばりの教育論が語られる王道の学園漫画になっているからだろう。
その意味では、同じくROBOTが製作した平田オリザ原作の『幕が上がる』(公開中)とも呼応する。奇しくもこの春、ROBOTの二枚看板である本広克行監督(『踊る大捜査線』シリーズ)と本作の羽住監督(『海猿』シリーズ)が、学園映画を競作したわけだ。先方は、古典的なまでに正攻法。対してこちらは、一見超変化球。だって、大人が子供たちに望んでいるのは、成長ではなく暗殺だから。でも、それを逆手に取って、中身はあくまでもシンプルな教育ものというのも面白い。
個人的な好みで言えば、自転車という映画的なアイテムが登場しても画面が一向に映画にならない本広作品よりも、VFXを多用した映像の中に坂道の通学路を紛れ込ませただけで、作品に映画的な空気をまとわせられる羽住監督の手腕を評価したい。★★★☆☆(外山真也)
【データ】
監督:羽住英一郎
原作:松井優征
出演:山田涼介、椎名桔平
3月21日(土)から全国公開
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外山真也のプロフィル
とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)