『カフェ・ド・フロール』 男の勝手な理想をドラマに?


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 タイトルから察し、てっきりフランス・パリにある名物カフェを舞台にしたおしゃれなラブ・ストーリーかと思っていた。でもコレ、マシュー・ハーバートの曲の方。監督のお気に入りソングだとか。本作は、1960年代パリの母子のドラマと、現代のモントリオールで起こった父の浮気によって崩壊した家族のドラマをこの曲で結びながら、2つのドラマが交錯していく。

 一見、バラバラに思えるこの話が最後にどう結びつくのか。その結末に、ロマンを感じるか?拍子抜けするか?はあなた次第。ちなみにあたいは、ちょっと強引じゃないの?と思ってしまったのだが。
 だってさー、要はクラブDJアントワーヌが引き起こした不倫劇なワケですよ。運命の人だと思ってキャロルと結婚し、2人の娘をもうけたものの、ローズという魅力的な女性と出会って不倫にまっしぐら。ついには離婚をし、キャロルも娘たちも、表面上は平静を装っているけど苦しむワケですな。でもその不倫劇には「運命」とも言える秘密が隠されていて、その謎を解くカギが60年代のドラマの方にあるという展開。なんだかんだと男の勝手な理想をドラマにしたと思えるのは、私の量見が狭いからですかね?
 監督は、米俳優マシュー・マコノヒーが、激ヤセしながらHIV患者を熱演した映画『ダラス・バイヤーズクラブ』で注目を浴びたジャンマルク・ヴァレ。カナダのフランス語圏出身で、こっちの方が彼の本領発揮作なのかも。★★★☆☆(中山治美)

 【データ】
監督・脚本:ジャンマルク・ヴァレ
撮影:ピエール・コットロー
出演:ヴァネッサ・パラディ、ケヴィン・パラン、エレーヌ・フロラン
3月28日(土)から全国順次公開
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

(C)2011 Productions Cafe de Flore inc./Monkey Pack Films
中山治美