国頭から活魚直送 年間契約で安定供給


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「生け簀の銀次」と「グリル銀次」店舗内にある県産活魚を入れたいけす

 「生け簀の銀次」などを運営するみたのクリエイト(中城村、田野治樹社長)は昨年から国頭漁業協同組合と提携し、県産活魚の提供を始めている。鮮度を保つため専用のいけすを設けた新店を昨年11月に宜野湾市内に開店した。

国頭漁港の沖合で捕れたムロアジやアカジン(スジアラ)などを生きたまま店舗に直送し、捕れたてで新鮮な魚を客の目の前でさばいて提供する。漁協と年間契約することで漁業者の収入の安定にもつながっている。
 「沖縄の人が食べたことのない刺し身の提供」をコンセプトに、原価割れ覚悟で低価格で新鮮な活魚を提供している。
 みたのクリエイトはもともと、他店との差別化を図るため活魚の提供を始めた。取り組み当初は、県外の活魚を各店舗に輸送していた。店舗が増えるに伴い活魚の供給不足が生じ、県内で活魚を提供できる団体として国頭漁協と出会った。
 2014年に国頭漁協で捕れた魚の一部の買い取りを始めたが、それでも活魚が足りず、同漁協の「いけす網」の借り入れにも手を広げた。いけす網には、漁港沖の定置網にかかる魚を生きたまま保存しておく。そこから生きたまま直送するため、これまで鮮度維持が難しかったムロアジなどの種類も販売することができ、販路拡大へつながった。
 活魚は輸送に経費が掛かるため、競り市場での取引価格より約1・5~2倍高で取引されるという。国頭漁協によると、みたのクリエイトと活魚買い取りで年間契約を締結したため、漁業者の安定収入につながっているという。
 国頭漁協からの活魚を受け入れるために開店した「生け簀の銀次」「グリル銀次」宜野湾店では、活魚を多くの人に知ってもらおうと原価よりも低価格で販売している。
 原価割れした分は、宣伝広告費の削減やその他商品との価格で調整している。
 低価格で高品質な商品の実現で広告を出さなくても口コミやSNS(会員制交流サイト)で評判は広がり、毎日のように満席状態という。
 食材の廃棄を出さないために、刺し身などで活用できない食材は洋食にアレンジして売り切る仕組みも構築した。
 田野社長は「これまで食べた刺し身とは全く違う歯応えが活魚にはある。活魚を食材に使うことで料理の幅も広がる」とこだわりを語った。
(上江洲真梨子)