辺野古 県反論 翁長知事コメント全文


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 県が27日に発表した知事コメント文は次の通り。
 執行停止申立書に対する意見書の提出に関する知事コメント
 本日、3月27日、農林水産大臣あてに、沖縄防衛局長から提出された執行停止申立書に対する意見書を提出した。

 私が行った3月23日の指示に、沖縄防衛局長が、農林水産大臣あて、審査請求に対する裁決があるまで指示の効力を停止するよう申し立てしたものであり、農林水産大臣から、本日までに意見書を提出するよう通知があった。
 23日の指示に対し、翌日24日に執行停止申立書が沖縄防衛局長から農林水産大臣に提出され、その日の午後には東京から農林水産省職員が、沖縄県に意見書提出に関する文書を手交しに来た。
 さらにその意見書の提出期限は3日後の本日27日という、行政手続き的には、いかがなものかと思える対応でしたが、県としては、何とか期限内の意見書提出に至りました。
 意見書の内容ですが、
 (1)まず、沖縄防衛局は指示により行政処分を受けたと申し立てているが、指示の法的位置づけは、行政指導である。
 (2)次に、沖縄防衛局は一般の国民同様の立場で処分を受けたと申し立てているが、そもそも、この申立制度は、国民に対して広く行政庁に対する不服申し立ての途を開くことを目的としており、国自体が不服申し立てを行うことが予定されていない。さらに法自体が、審査する立場にある国が、別の国の機関から申し立てをうけることを想定していないので、沖縄防衛局は申請人としての性質を持たない。
 (3)また、沖縄防衛局は、地方自治法第255条の2を根拠としているが、岩礁破砕等の許可制度は法定受託事務であることから、そもそも県の手続きに不服があるなら、地方自治法第245条の8にある、代執行等で行うべきである。
 以上から、この申し立て自体が成立し得ないことから、それを認めて執行停止に至ることは認められないと意見した。
 もし仮に、この申し立てが成立したとしても、次の理由から、県の行った措置は適法であることも意見を述べた。
 (4)岩礁破砕の定義からも、常識的にも、最大45トンものコンクリート製構造物の設置は、船舶の投錨(とうびょう)に類する軽微な行為ではないことは明白であり、岩礁の破砕に該当し得ることも明白である。
 (5)事前協議について、県は、取扱方針に明文で記載されている内容を説明し、岩礁破砕行為でない投錨程度の軽微なものは申請が必要ないとしたものを、沖縄防衛局はあたかもアンカーと称すれば、いかなる巨大なものであっても申請が必要ないとの説明を受けたかのようにすりかえ、さらに申請書からも削除させたかのように主張している。
 しかし、沖縄防衛局は、当初、浮標のアンカーには160キロ程度のものを使用し、一方、許可申請書内では汚濁防止膜のアンカーとして、およそ15トンのコンクリート製構造物を記載していることからすると、コンクリート製構造物の設置に関しては、適切に許可申請の要否を判断できていたと考えられる。
 さらに、中谷防衛大臣の国会答弁でも、10月の台風時にフロートが流されたことを受け、アンカーを重くすることを環境監視等委員会に説明したとあることから、45トンものコンクリート製構造物の設置は、当初から計画されていたものではないと考えられる。
 (6)現在実施されているボーリング調査にまで停止を求めていることに対しては、指示は、許可区域外において無許可で行われている巨大コンクリート製構造物の投下行為が行われている蓋然(がいぜん)性が認められること、及び、許可区域外の工事の停止と調査を求める指示に対して十分な対応をしてこなかったことを理由として、コンクリート製構造物の投下行為と一体となる工事の停止と調査を行わせるよう求めるものである。
 (7)浮標等のアンカーについて、沖縄県内で国の機関を事業者とする他の同種事案においても岩礁破砕等の手続きの対象とされていないと主張しているが、その情報は、許可を必要とするべき漁業権内の海域であるかどうかなど、何も示されておらず、沖縄防衛局の資料でも最大8トンとなっており、20トンや45トンものコンクリート製構造物とあまりにもかけ離れている。
 県外の事例も示されているが、漁業権が設定されている海域なのかどうかなど、必要な根拠は何も示されていない。
 (8)アンカーの設置面積を約300平方メートルとし、許可を受けた区域が約160ヘクタール、施行区域は約560ヘクタールと比較して、比例原則に反して著しい権限濫用と主張しているが、総面積約300平方メートル、臨時制限区域の外周、約10キロにわたって数十個のコンクリート製構造物を設置する行為を軽微とするなら、水産資源の保護培養、漁業秩序の確立という法の趣旨を明らかに軽視するものに他ならない。
 最後に、沖縄防衛局は、指示により工事が停止されることに関する損害として、普天間飛行場の返還の遅れに直結する、日米関係にも問題が生じると主張しているが、
 (9)戦後70年を経た今もなお、国土面積の約0・6%しかない本県に約74%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがなく、その米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因であることは明確である。
 日本の安全保障が大事である。それは私も等しく共有する思いでありますが、負担を沖縄県民だけが背負うのではなく、日本国民全体で考えるべきである。
 その様な歴史をたどって来たからこそ、沖縄の県民は先の県知事選において、36万票という民意となり、移設による負担の継続ではなく、米軍基地負担を否定する道を選んだのである。
 普天間飛行場を抱える宜野湾市民の意思も、約3千票の差をもってこれが支持されていることも忘れないでいただきたい。
 それにもかかわらず、政府の一方的論理によって、辺野古移設を「唯一の解決策」であると決めつけて、普天間飛行場の負担の大きさを執行停止の理由として述べることは、悲しいことでありますが、沖縄県民の痛みを感じない、感じようとしない政府の姿勢があることを国民の皆さまに知っていただきたい。
 (10)国の言い分はあまりに抽象的な主張であり反論の必要に欠けるが、基地の移設について日本の国内法に基づいた正当な許可手続きを経て実施させることが、なぜ、日米関係の悪化につながるのか私には理解できない。
 また、日米関係が悪化するから、日本国内法に基づく必要な許可を得ないままに作業を続行させて良いというのであれば、それは主権を持つ一つの独立国家の行動ではないと断じざるを得ないであろう。
 (11)そもそも、幾度となく、情報提供や調査協力の要請を行うとともに、コンクリート製構造物の設置行為が岩礁破砕行為に該当するのであれば、必要な手続きを採るべきであることをも伝えてきたが、沖縄防衛局は、許可の申請や協議を行うことなく、工事を続行し続けて来た結果、県自身で調査活動を行わざるを得ない状況に陥ったのである。
 このような意見をもって、沖縄防衛局の申し立ては、不適法であって却下されるべきであり、また、仮に申し立て自体が適法であったとしても、明らかに執行停止の要件を欠如するものであるから、速やかに棄却されるべきであると意見した。
 2015年3月27日
沖縄県知事 翁長雄志