【島人の目】日伊は「テロとの戦い」の同士


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 後藤健二さんが過激派組織「イスラム国」に拘束殺害された事件に続いて、日本人が巻き込まれる過激派によるテロが北アフリカのチュニジアで起こった。外国人観光客を狙ったこのテロでは、日本人3人とイタリア人4人を含む21人が犠牲になった。

 チュニジアは「アラブの春」の混乱が続く中東諸国の中で、唯一民主化が成功したアラブ国家として比較的安定してきた。昨年7月には僕自身もチュニジアを訪ねて、そのことを実感したばかりだった。
 チュニジアのテロの実行犯は、隣国のリビアで「イスラム国」の戦闘訓練を受けたとみられている。カダフィ独裁政権が倒れた後、内戦状態に陥っているリビアには、混乱に乗じて過激派組織「イスラム国」が侵入し影響力を強めているのである。
 「イスラム国」は後藤さんを殺害した直後、リビアの地中海沿岸で21人のキリスト教徒を惨殺し、例によってその模様を撮影した恐怖映像をインターネット上に公開した。ビデオ映像には「今後はローマに向けて進軍する」という趣旨のメッセージが付けられていた。
 処刑場となった地中海の対岸には、ここイタリアがあり、首都ローマには何世紀にもわたってイスラム教徒と対立してきたキリスト教カトリックの総本山・バチカンがある。「イスラム国」はバチカンに挑戦状を叩きつけたのである。彼らはローマを占領し、そこを足掛かりにヨーロッパ全土を手中にする、という計画を持っている。
 「イスラム国」は後藤さんと湯川遥菜さん2人を拘束した際に、今後は日本と日本人も彼らのテロの標的だと宣言した。その意味ではイタリアと日本は同じ立場に置かれている。日伊は国際社会と協調して「イスラム国」をはじめとする過激派に強く対抗していくべきである。
(仲宗根雅則、TVディレクター)