白血病の父に成長の姿 森さん、定演練習に招き演奏


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小禄高校定期演奏会のリハーサルに白血病の父・和亜希さん(前列)を招待した森由布那さん(後列左)と和亜希さんと共にリハーサルを見た母・多恵子さん(同右)、弟・快斗さん=13日、那覇市民会館

 3月1日に小禄高校を卒業した森由布那(ゆうな)さん(18)=那覇市=は、白血病を患っている父・和亜希(かずあき)さん(40)にこれまでの感謝の思いを伝えるため、13日に行った所属する吹奏楽部の定期演奏会リハーサルに招待した。

父親の前で熱のこもった演奏を披露した森さんは「部活や受験で忙しくて(和亜希さんの)そばにいれなかった1年間の頑張りを見せられた」と笑顔を見せた。
 昨年4月に白血病を発症した和亜希さんは闘病生活を送り、寛解(症状が落ち着き安定した状態)となった。現在は自宅から通院し、寛解を保つ治療を続けている。
 クールで父親とはあまりしゃべらないという森さんだが、高校卒業まで大事に育ててくれた父親や母親への感謝の気持ちは胸に抱いてきた。
 1日の卒業式には卒業証書を受け取るために上がった壇上で、「僕の父は白血病でここに来ることはできなかった。その父にも聞こえるように大きな声でお礼を言いたい。ここまでこれたのはあなたがたのおかげです」とあいさつした。静まりかえった会場は割れんばかりの拍手で包まれたという。
 母・多恵子さん(45)は「突然のことでびっくりした。人目もはばからずに号泣してしまった」と振り返る。多恵子さんから話を聞いた和亜希さんは「意外だったけどうれしかった。まだ死ぬわけにはいかないなと思った」と語る。
 14日に行われた定期演奏会前日のリハーサルでは、舞台の準備や部員と楽しく打ち合わせている姿も見せた。
 白血病を発病するまでは、仕事などで演奏会に来ることができず、初めて息子の演奏を見たという和亜希さんは「演奏しているところを見られてよかった。日ごろとは別人のようだった」と感慨深げだった。
 森さんは4月から和菓子職人を目指し、長崎の短期大学へ進学する。「1人暮らしを始めるが、心配させないように頑張りたい」と意気込む。和亜希さんは「(リハーサル中の)しっかりしている姿を見ると長崎に行っても安心だね」と息子の背中を押した。
(屋嘉部長将)