『エイプリルフールズ』


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マイノリティーへの共感を笑いに転化
 堺雅人主演の法廷ドラマ『リーガルハイ』シリーズを手掛けたフジテレビのチームによる映画オリジナル作品だ。エープリルフールのウソをめぐる7つのエピソードが、主要キャストだけでも27人に及ぶ豪華アンサンブルでつづられる。

 脚本の古沢良太は、1~3月クールの月9ドラマ『デート ~恋とはどんなものかしら~』が評判となったが、恐らく本作の方が先に書かれたに違いない。というのは、メーンで描かれる対人恐怖症の妊婦のエピソードは、コミュニケーション能力こそが社会的勝者となるための最大の武器とされる現代にあって、その能力を欠いたリケジョ(理系女子)と自称「高等遊民」の恋を弾けたエンターテインメントに昇華させた『デート~』の達成へと至る手前の、過渡期的な中途半端さを感じさせるから。
 ほかにも、同性愛や不登校、昔気質のヤクザのエピソードなど、社会的マイノリティーに向ける古沢のまなざしは、随所で『デート~』と共鳴する。これは、アカデミー賞授賞式での脚本家のスピーチが話題を呼んだ『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(公開中)ともリンクするテーマだが、古沢がスゴイのは、そんな社会的マイノリティーへの共感を笑いに転化して描けるセンスにある。今最も旬の脚本家・古沢良太から、ますます目が離せない! ★★★☆☆(外山真也)

 【データ】
監督:石川淳一
脚本:古沢良太
出演:戸田恵梨香、松坂桃李
4月1日(水)から全国公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也