不登校 伊江島で克服 高校進学 住民に感謝


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不登校を克服した渡辺裕人君(左から3人目)と父の裕之さん(同2人目)、復学のきっかけをつくった山城克己さん(右端)・絹枝さん夫妻=2日、伊江村内の飲食店

 【伊江】伊江島の自然と人々との交流の中で「不登校」を克服した愛知県在住の少年が謝意を伝えるため、3月末に島を再訪した。

渡辺裕人君(15)がその人。裕人君は小学4年から約5年間、学校を休みがちな生活が続いたが、昨年8月、伊江村の山城克己さん(57)宅で寝食を共にし、伊江島で本来の生活リズムを取り戻した。9月から復学を果たし、今春、地元の公立高校に合格した。
 裕人君は小4の時、起立性低血圧症・三半規管異常などの診断を受けた。「朝起きられない。体調がすぐれない」などを理由に学校を休む日が続いた。以来、親の目をごまかし、体調が悪いふりをして学校を休んでいたという。
 そんな時、裕人君は父親の裕之さんから「(親元を離れ)伊江島に行ってきなさい。行けば分かる」とだけ言われ、約3週間の島暮らしを体験した。朝6時に起床。牛と鶏の餌あげなどは、朝食前の日課。ボランティアで島内の保育所へ通い、図書館で勉強。その後は日没まで畑作業を繰り返す生活を経験した。
 あまりのつらさに一度は実家に逃げ帰ったものの、時間を持て余した。「乗り越えたい」という気持ちの変化を感じて島に戻り、父との約束の期間を全うして長年の不規則生活にピリオドを打った。昨年12月、「完治」の太鼓判が押された。
 裕人君は「伊江島に来なければ、学校へ戻れなかった。今、活力が湧いている。将来は新エネルギー開発に取り組む科学者になりたい」と目標を見つけた。
 裕之さんも2日、島を訪れ、裕人君と共にお世話になった住民らと再会。裕人君は「伊江島に来なかったらニートになっていたかもしれない」と感謝し、“再起”のきっかけづくりの大切さを訴えた。
 不登校の児童生徒を救うための手段として、ボイスメッセージや色紙を贈るなど継続的な友達の呼び掛けが有効と裕人君は言う。「登校時には変な目で見られない環境づくりをしてほしい」と強調した。
(中川廣江通信員)