『バードマン』 気を吐く米国外の才能たち


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『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

 本年度米アカデミー賞で作品賞をはじめ4冠を受賞。落ちぶれたスターがブロードウェーで再起を図ろうとする、かつての『バットマン』スター、マイケル・キートン自身を彷彿させる、いわゆる業界内輪モノ。そりゃアカデミー会員たちも共感バリバリで支持するでしょう。

 でも本作の魅力は、授賞式の壇上で俳優ショーン・ペンが「誰だ? こいつにグリーンカードを与えたのは?」と冗談めかして言った一言に集約されると思うのですよ。前年の同賞をにぎわせた『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督と同じく、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督もメキシコ勢。
 本作のカメラマンは、その『ゼロ・グラビティ』で、観客に宇宙空間を体感させてしまったエマニュエル・ルベツキだ。今回もまた、ブロードウェイのステージと楽屋裏を行き来する俳優陣をドキュメンタリーのように追い回し、さらに1シーン1カットのような驚異的な映像を作り上げてしまった。シリーズものを作り続けるハリウッド勢に対して、気炎を吐き、刺激を与えているのは彼らを含めた米国外の才能あふれた方たちだ。
 こうした彼らの徹底した映像へのこだわりは、スマホやインターネットとメディアが多様化している中、あらためて劇場で映画を見ることの楽しさを観客に再認識させることにつながっていると思う。何よりその志の高さを、筆者は支持する。★★★★★(中山治美)

 【データ】
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン
4月10日(金)から全国公開
(共同通信)
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。

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中山 治美