『Mommy/マミー』 デジタル世代ならではの音楽&映像センス


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今、世界の映画界で最も注目されているカナダの新鋭グザヴィエ・ドラン監督。1989年生まれの26歳。実に若い。でもそれが彼の最大の魅力であり、若者特有の不器用な愛情表現が、周囲はもちろん自分をも傷つけてしまうヒリヒリとした人間関係を描くことを得意とする。

 そしてもう一つが、デジタル&スマホ世代ならではの音楽&映像センス。その才能をいかんなく発揮したのが本作だろう。なんと1対1の画面比率を採用。そのポートレートサイズの世界で繰り広げられる母子の愛憎劇のなんとスリリングなことか。
 ご存じ、昨年のカンヌ国際映画祭で、3Dに挑戦したジャンリュック・ゴダール監督と共に審査員特別賞を受賞。くしくも、新たな映像表現の可能性を提示した2監督に授与されたこととなる。この辺りのカンヌの演出もニクい!
 発達障害がある息子が矯正施設で問題を起こし、シングルマザーのダイアンが自宅で引き取ることになったことから、母と息子の苦悩が始まるという、今の社会を反映したような話でもある。日本だって同様の作品はこれまで、あったと思う。しかしそれをどう人に見てもらうかで歴然とした差が表れるというお手本のような作品。彼のような逸材を擁するカナダ映画界に嫉妬する。★★★★☆(中山治美)

 【データ】
監督・脚本:グザヴィエ・ドラン
出演:アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、アントワンオリヴィエ・ピロン
4月25日(土)から全国順次公開
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。
(共同通信)

(C)Shayne Laverdiere/(C)2014 une filiale de Metafilms inc.
中山治美