『私の少女』 弱者の目線に立った心の再生物語


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 ペ・ドゥナ主演の韓国映画で、『冬の小鳥』『アジョシ』の子役として知られるキム・セロンが共演。海辺の村を舞台に、都会から来た警察派出所の孤独な女性所長と、母親に捨てられ、継父やその母親から虐待を受ける14歳の少女の交流が描かれる。

 同じく5月1日公開の映画『ビリギャル』が、最初から環境に恵まれていた子の努力によるサクセスストーリーなのに対し、本作は環境に恵まれなかった子に手を差し伸べる話と言えるだろう。主人公側から見れば、彼女が少女と出会って“あしながおじさん”になるまでの心の再生物語となる。
 だから、『私の少女』という邦題(原題は、主人公が少女を呼ぶ時の「ドヒちゃん」という意味)が、昨年の映画『私の男』を意識したものに思えてくる。助詞の「の」が同様に所有を表す属格の「の」である本作は、“同じ匂い”を感じて引かれ合う2人という点で、『私の男』の親子に重なって見えるから。
 同じ匂いというのは、性的マイノリティーを理由に都会を追われた主人公の心の傷に由来する。だからこそ、少女をえたいの知れないバケモノと感じる他の大人たちと違って、大人によって環境を奪われ傷ついた少女の心に共鳴できたのである。今の時代はやはり、弱者=マイノリティーの目線に立った作品の方が、断然面白い! ★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督・脚本:チョン・ジュリ
プロデューサー:イ・チャンドン
出演:ペ・ドゥナ、キム・セロン
5月1日(金)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也