『イタリアは呼んでいる』 グルメ旅行でも意外とシリアス


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 中年男2人のイタリア旅行。さすがに「ロッセリーニの傑作のような」とまでは言わないが、それでもウィンターボトムらしい“生っぽさ”に満ちたオツな映画に仕上がっている。主演はスティーヴ・クーガンとロブ・ブライドン。

 近年のウィンターボトムは、『イン・ディス・ワールド』『グアンタナモ、僕達が見た真実』など社会性の強い作品で評価されているが、本作は真逆。ショービズ界で活躍する2人が、ミニクーパーをレンタルしてグルメ取材旅行をエンジョイする話だから。
 とはいえ、食や恋といった生命力と対比させて死のイメージが顔を出したり、対照的な状況にある似た者主人公2人のコントラストが中年男の悲哀を際立たせたりと、内容は意外とシリアス。その上で、人気コメディアンの2人が実名のまま役を演じ、アドリブはもとより特技のモノマネもたっぷりと披露するあたりは、まさにウィンターボトム色全開と言える。
 また、本作には過去の映画が数多く引用されているが、ロッセリーニの『イタリア旅行』もその一つ。だが、そもそも生っぽい画面の肌触りという点で、ウィンターボトムはロッセリーニの系譜に属する監督なのだから、ひょっとすると、ロッセリーニが今生きていたらこんなイタリア旅行を撮ったのでは?という彼なりのオマージュなのかもしれない。★★★★☆(外山真也)

 【データ】
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン
5月1日(金)から全国順次公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也