琉球新報社 ウィル・スミス主演の、いわゆるコンゲームもの。演じるのは仲間と共に金持ちたちから大金をせしめる天才詐欺師で、ハウツー本のように紹介される、人間行動学に基づく多彩なダマしのテクニックが見どころとなっている。
コンゲームものの醍醐味は、観客が主人公にダマされるところにある。だから、ダマされることに快感を覚えてもらえなければ失敗である。簡単ではない。この手のエンタメ作品の場合、主人公に感情移入させることが常套手段だが、自分も詐欺師になったつもりで見ていたら、同化したはずの相手にまんまと裏切られるわけだから。
それでもカタルシスを覚えさせるためには、次の２つが不可欠だろう。（１）有無を言わさない完璧な詐欺のテクニック。（２）ダマされる金持ちが感情移入できないような嫌なやつ。（１）は前述の通り申し分ないし、どんでん返しも利いている。ユニークなのは、むしろ（２）の方である。ダマされる側の存在感が薄い代わりに、ダマす側とダマされる側の間に、我々の目線を代弁するヒロインを用意。しかも、それが共感キャラから最も遠いはずのファムファタールの役割も担っているのである。
我々は彼女と一緒に詐欺のスキルを学び、彼女と一緒に主人公にダマされるが、同時に彼女は主人公をダマして虜にする存在でもあるのだ。峰不二子のように。見終わった時誰もが、彼女と一緒にダマされたことに快感を覚えるに違いない。★★★★☆（外山真也）
【データ】
監督・脚本：グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
出演：ウィル・スミス、マーゴット・ロビー
５月１日（金）から全国公開
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外山真也のプロフィル
とやま・しんや 映画ライター＆時々編集者。１９６６年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体：月刊ＴＶｆａｎ、日本映画ｎａｖｉ、ぴあ各誌。
(共同通信)
