『ズタボロ』 ここまでやるか!のどつきあい満載


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 『愛の渦』に『百円の恋』など、エロにどつきあいという東映らしいカラーを継承しながら気を吐いている東映ビデオ。今回は本社東映が松田翔太主演で放った『ワルボロ』を引き継いだ。西東京でやんちゃしていた原作者・ゲッツ板谷の実体験を基にした不良青春群像劇だが、タイトルに偽りナシ。ここまでやるか!のズタボロのどつきあいシーンが満載だ。

 ただ、イジメを原因とする凄惨な事件が相次ぐ中、暴走族界のヤキ入れシーンもあったりして、眉をひそめる人もいるでしょう。でも本作は、高校生になって不良の縦社会の中から抜け出せなくなっている主人公コーイチを見守る母親の存在が素晴らしくて、現実社会でもきっと参考になると思うんだな。クソババアとののしられても、息子がさらに悪い連中とつるむようになっても、南果歩演じる母親が諦めずに叱りとばし、食らいついていくんだなぁ。実際、板谷氏は本人も認めるくらいのマザコンで、このお母ちゃんがいたから更生したという。母の愛は強し。そして南は『さよなら歌舞伎町』といい、枯れた中年女性を演じると、良い味を出しますな。
 主演の永瀬匡をはじめ、若手俳優たちも体を張って頑張った。知名度はまだまだだけど、洗練されていない荒っぽさが本作のテイストにピッタリ。欲を言えば、もう少し人間関係をすっきり見せてほしかったな。★★★☆☆(中山治美)

 【データ】
監督:橋本一
脚本:高橋泉
出演:永瀬匡、清水富美加、堀井新太、成田瑛基
5月9日(土)から全国順次公開
(共同通信)
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中山治美のプロフィル
 なかやま・はるみ 映画ジャーナリスト。1969年水戸出身。スポーツ紙出身の血が騒ぎ、撮影現場やカンヌ、ベネチアなど映画祭取材に燃える。三池崇史、深作欣二、キム・キドク、アキ・カウリスマキなどひとクセのあるオヤジたちが大好き。

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中山 治美