沖縄と石川、農業者交流 技術習得や情報交換


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4月から石川県に移り住み農業技術を学ぶ(前列左端から)當山恵美さんと下里一文さん(ブランド北陸提供)

 石川県で沖縄県産野菜を販売している「ブランド北陸」(石川県、薄井壮登志(まさとし)社長)は、沖縄と石川、両県の農業者の交流事業を本年度から始めている。出荷量が減る閑散期に、互いに農業者を派遣する。農家の相互交流で生産技術を習得し、流通業者との交流を通じて全国の市場動向を把握、沖縄県産農作物のブランド確立に取り組む。

 交流事業は「沖縄県産農作物の品質基準が甘い」「突然の契約破棄が多い」「納入期限を守らない」など全国市場での沖縄農家の評価を受けて始まった。沖縄県産農作物の閑散期である夏場、石川の農場に実習に行き栽培技術などを学ぶ。研修中に市場関係者と交流し、市場ニーズを把握する。一方、冬場は沖縄の農場で石川からの農家を受け入れ相互に技術や情報交換などを行う。沖縄の農家育成にも貢献することができる。
 トマトやレタスなどの沖縄県産農作物は、全国の市場で野菜が不足する冬場に出荷できる。全国と比べて温暖な気候や、積雪の影響を受けないなどの環境が冬春季野菜の出荷を可能にしている。しかし、ブランド北陸の薄井社長は「冬場に野菜が採れる最高の環境があるにもかかわらず、その環境を十分に生かしきれていない」と指摘する。
 薄井社長は「高品質で安定的な供給が見込めるのであれば、沖縄野菜は全国の市場が欲しがる。島野菜は特に伝統野菜として百貨店などでも売り物になる」と強調する。さらに「相互に交流することで、農業者育成ができ相互に利益が生まれる」と話す。
 本年度は、沖縄から2人が石川県に移り住み、ピーマン栽培やカボチャの出荷作業などに携わっている。宮古島から石川県に移住した下里一文さんは、父親の事業を継ぐために技術を学びに来た。最低でも2年間は石川を拠点に農業に取り組む。冬場は沖縄、夏場は石川で技術向上を図る。下里さんは「石川県は農家所得が全国8位と上位にある。石川県で栽培技術をしっかりと学び、地元の1次産業の活性化に貢献したい」と意気込みを語った。
 (上江洲真梨子)