飼料高騰 経営に打撃 県内酪農離れ止まらず


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県内乳用牛飼養戸数と生乳生産量

 円安による飼料価格の高騰や後継者不足の影響で、県内酪農家の減少が止まらない。県酪農農業協同組合(新里重夫組合長)によると、2014年度の乳用牛飼養戸数は03年度の約半分の66戸、生産量は36・6%減の2万2093トンと減少し続けている。同組合は「ヘルパー制度」導入や雄牛の買い取り制度など酪農家への支援を実施し、新規就農者を獲得したい考えだ。

 県内の生乳自給率は9割前後を推移している。しかし、度重なる台風や戸数減少で県内分の供給量維持が危ぶまれている。県内量販店の乳製品コーナーには、北海道産牛乳の陳列がここ数年見られるようになった。量販店の担当者は「県産牛乳がほぼ9割。供給量維持のため、一部県外産牛乳を仕入れている」と説明する。保存技術や移動技術の向上で、県産牛乳より約10日長持ちするという。県酪農農業協同組合担当者は「これまで県産牛乳でほぼ占められていたが、県外産牛乳が入ることで価格競争が始まるのではないか」と懸念している。
 県内乳用牛飼養戸数は、1980年の276戸をピークに減少し続けている。08年ごろから円安による飼料高騰が続き、県内酪農家の経営を圧迫している。近年は中国や中東でも畜産業が盛んになり、牧草などの粗飼料の価格が高騰傾向にあり、前年平均から約10~20円の値上がりをみせている。
 飼料高騰や高齢化で、酪農家戸数の減少は全国的に広がりをみせる。県内の乳用牛の大半は北海道から導入している。しかし、戸数減少で1頭当たりの乳用牛価格は03年度から約2倍の60万円相当で売買されている。
 酪農家の負担を軽減しようと、県酪農農業協同組合はさまざまな取り組みを実施している。雄牛が生まれた場合、2万円の祝い金贈呈や酪農家が休めるよう酪農経験者が「ヘルパー」として手伝っている。そのほか、県内乳牛メーカーに価格の引き上げを要請している。同組合担当者は「価格が上がらないと酪農家のモチベーションが下がり、離農がさらに広がる」と語った。(上江洲真梨子)