『Zアイランド』 ゾンビ映画へのオマージュに満ちた作品


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 シネフィルの映画監督というのは、どうしてもゾンビを撮りたくなるものらしい。『東京公園』の青山真治しかり、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八しかり。けれども聡明な彼らは、ゾンビ映画自体に手を出したりしない。自らの偏愛は作中にそっと忍び込ませる程度にとどめるのだ。その点、本業はお笑い芸人で映画監督としては素人に等しい品川ヒロシが真正面からゾンビ映画に取り組んだとしてもご愛嬌だろう。

 本作は、ゾンビ映画の骨組みの中にヤクザの抗争を盛り込んだアクション・ホラーで、ゾンビ映画へのオマージュに満ちている。舞台は絶海の孤島、そこに謎のウイルスが蔓延し、JKやナースら美女たちが絡むなどお膳立てもしっかりしている。
 残念なのは、品川に素人という自覚が薄れてきていることである。確かに初監督長編『ドロップ』は素人離れした出来栄えだったし、今回も「ゾンビは音に反応する」という映画的な設定を用いたクライマックスには才気が感じられる。だが、音を生かし切れているかというと…。
 アイデアは、技術が伴って初めて機能するもの。音以外にも、随所で「あなたは自分で思っているほど映画を知らない」と指摘したくなる。映画的な知性を欠いた幇間たちの侫言に惑わされているだけかもしれないが。
品川ヒロシよ、君には才能がある。だから、初心にかえって謙虚に技術を磨け!と諫言したい。★★★☆☆(外山真也)

 【データ】
監督・脚本:品川ヒロシ
出演:哀川翔
5月16日(土)から全国公開
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外山真也のプロフィル
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、ぴあ各誌。
(共同通信)

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外山真也